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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2004年12月

日本語 / English / Français
最終更新: 2004年12月31日
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■ファイナル・ミッション (2004/12/31)
■聖夜のブロイラー (2004/12/25)
■初詣2004の採点表 (2004/12/24)
■『手話でいこう』は福祉の専門書? (2004/12/18)
■『手話でいこう』刊行! (2004/12/17)
■アフリカ重大ニュース2004 (2004/12/15)
■人類学的に気になるキーワード2004 (2004/12/12)
■電車の中でつい見てしまうもの (2004/12/10)
■通勤電車のたらばがに (2004/12/01)


2004年12月31日 (金)

■ファイナル・ミッション

毎年の年末。私がひそかに「ファイナル・ミッション」(最後の任務)と呼んでいる仕事がある。それは「年越しそばを年内にすませること」。

大げさな話ではない。年越しそばをもたもたと食べている最中に、一分でも新年にかかってしまったら? それはもう、想像を絶する間の悪さだ。ぜったいに遅刻が許されない大仕事。台所をつかさどる私の責務は重大である。

23:10頃には台所に立つ。時間を見計らってそばをゆで、23:40頃には食卓へ。23:50には食べ終わってもらい、大急ぎでお茶を入れながら鍋と包丁を洗い、ゴミをすべて片づける。

きれいになった台所を出、お茶をもってコタツに座った時には、すでにカウントダウンの一分前だった。ああ、よかった。

The Final Mission, completed. そして、また新しい年の食生活が始まります。


2004年12月25日 (土)

■聖夜のブロイラー

クリスマス・イブ。私はフライドチキンの店の行列に並んでいた。

カウンターの向こう側は、戦場のような忙しさ。たたみ一畳くらいのごくせまい空間に店員たちが6人、せわしなく商品を包んでいく。横一列に並んで、うつむきで細かい動きを続けるその人間たちの姿が、えさをついばむ養鶏場のブロイラーそっくりに見えた。

だいたい、扱っているのがブロイラーのフライドチキンだし。「やっぱり飼い主はペットに似るのかねえ」などとアホなことを想像しながら時間をつぶしていた。

もっとも、カウンターの内側から見れば、20分もあきもせずに並んでいる客の方が、ブロイラーに見えているに違いない。「みんな同じ日に雁首そろえて、同じチキンばっかり買いに来よって」と。

クリスマスにカウンター越しに会った似た者どうし。我ら地上のすべてのブロイラーたちに幸いあれ。


2004年12月24日 (金)

■初詣2004の採点表

2004年の初詣で願掛けした三つの目標を、自己採点しました。

一つは成就。『手話でいこう』の刊行です。「12月30日発行」という、何ともまあギリギリの達成ですけれど(汗)。学問の神様、ありがとうございました。

一つはかなわず。というか、うっかりミスで手続きを怠った「不戦敗」。

もう一つは、部分的な達成。来年も一層がんばりなさいという神様のお達しなのでしょう。

○1、×1、△1。こんなもんかな、といった感じで、この一年を終えていきます。

今年一年間、お力添えをいただきましたみなさまにお礼申し上げます。来年もよい年でありますように。


2004年12月18日 (土)

■『手話でいこう』は福祉の専門書?

『手話でいこう』は、言ってみれば「異文化夫婦エッセイ」。ろう者と聴者という、言語・価値観・世界観の違う二人が、一緒に暮らしたらどうなるか。それをぶっちゃけて書いた本。

最近のはやりで例えれば、『ダーリンは外国人』の隣とかに並んでいても不思議ではない本なんです(ついでに、ベストセラーにあやかりたい)。

いくつか見た本屋では、ほぼ例外なく「福祉・手話」のコーナーに置いてあった。ええ、もちろんそこにもあってほしいのだけれど、福祉の専門書の中にうもれてしまうと、ちょっともったいない気もするのです。ふつうのエッセイコーナーの中に一冊くらいまぎれこんでいたら、思わぬ読者と出会ってくれるかも知れません。

全国の書店の担当の方、こんなアイディアはいかがですか?


2004年12月17日 (金)

■『手話でいこう』刊行!

妻(ろう者)との共著『手話でいこう──ろう者の言い分 聴者のホンネ』(ミネルヴァ書房, 2004年12月)、ついに刊行。本屋に並び始めた。

悪いことをしているわけではないのだが、本屋で最初に見つけたときは、ギクッとしました。

日々、電車の中でカバーをかけずに読んでいます。一人でも多くの方々の目に触れていただけますように。


2004年12月15日 (水)

■アフリカ重大ニュース2004

私見で選んだ「アフリカ重大ニュース2004」。こうやってまとめておくと、数年後くらいに役に立ったりするんですよね。

(1) スーダン西部ダルフールの虐殺
アラブ系民兵による黒人住民への襲撃が続き、死者数万人以上、難民100万人以上とも。この国の歴史的な南北対立に関する和平が進む一方、その枠組みから取り残された西部で反政府運動が強まったことが背景にある。国連安保理でもたびたび制裁が検討されるも、石油利権を持つ中国が制裁に消極的なため、難航する。
(2) ケニアの環境活動家にノーベル賞
ワンガリ・マータイ氏が平和賞受賞(12月)。アフリカの女性として初のノーベル賞受賞者となった。環境系の活動が初めて平和賞の対象となったこと、氏がイラク戦争反対の意思表示をしていることも注目された。
(3) 常任理事国に三大国が名乗り
国連安保理の常任理事国に、ナイジェリア、南アフリカ、エジプトが名乗りを上げた(9月)。いずれおとらぬ地域大国。政治的なバランスも考慮して、アフリカについては輪番制常任理事国も検討されているとか。
(4) 石油輸出大国ナイジェリアの政情不安
ナイジェリア東部デルタで、武装組織「デルタ人民志願軍」が蜂起、石油資本への宣戦を布告する(9月)。直後に、国内のガソリン価格高騰に抗議して労働組合がゼネスト(10月)。ナイジェリアで事件が起こるたびに原油価格に影響が及び、新聞の経済欄でよく言及された。
(5) コートジボワール政府軍、仏軍と衝突
コートジボワール政府軍が、PKOで駐留中の仏軍を攻撃、仏軍が即時報復(11月)。白人への憎悪を煽る運動も過激化している。長らく親仏路線によって経済成長をとげてきた「フランスの優等生」が、ついにフランスに銃を向け始めた。
(6) 赤道ギニアクーデター未遂事件
ジンバブエのハラレ空港で南アの傭兵集団が一斉検挙され、赤道ギニア政府の転覆計画が発覚(3月)。英サッチャー元首相の息子マーク・サッチャー氏も、支援容疑で逮捕(8月)。石油資源をめぐるこの謀略、英政府も事前に察知していたのか?
(7) 南ア総選挙でANC圧勝
アパルトヘイト撤廃10年の節目に行われた南アフリカの総選挙で、与党ANC(アフリカ民族会議)が全議席の2/3を占め圧勝、ムベキ大統領が再選された(4月)。一方、失業・HIV対策や幹部汚職疑惑などで、ANCへの不信感を強める有権者も。
(8) AU首脳会議、苦悩の末のスーダン派兵
エチオピアのアディスアベバで、第3回アフリカ連合(AU)首脳会議開催(7月)。相次ぐ内戦や国際紛争に備えて、常設の平和維持軍とそのための基金の設立などについて合意した。しかし、スーダンのダルフール問題への対応で、AU部隊の派遣決定が難航するなど、内政不干渉の原則や財源不足が制約に。
(9) リビア、アメリカに屈する
イラク戦争を目の当たりにしたカダフィ大佐、ついに反米路線を転換する。核開発を放棄し、西側首脳が次々と訪問。かつての反米の雄は、西側の投資を望むすっかりよい子になってしまいました。
(10) 朝鮮代表団がアフリカ歴訪
朝鮮の代表団(代表:最高人民会議常任委員会・楊亨燮副委員長)がアフリカを歴訪し、ミサイルの輸出についてナイジェリアと合意(1月)。すかさずアメリカが横やりを入れ、ナイジェリアから「朝鮮からミサイルを買いません」との言質を取った。

来年も、アフリカと世界のすべての人々に幸せが訪れますように。


2004年12月12日 (日)

■人類学的に気になるキーワード2004

2004年の流行語大賞は「チョー気持ちいい」だそうです。しかし、人類学者はこういう健康的な言葉に飽きたりません。「神経を逆なでするような言葉」も記憶にとどめてこそ歴史というものです。

ジンルイ日記が選ぶ「人類学的に気になるキーワード2004」。

(第1位) 「人格を否定するような動き」
受賞者:徳仁氏(皇太子)
皇太子が記者会見で宮内庁の一部の動きを批判(5月)。「人格否定」なんていうすごい言葉が新聞・雑誌の見出しに踊るという事態が続く。そもそも「人格」って何だっけ、と思わず胸に手を当てて考えてしまった。
(第2位) 「自己責任」
受賞者:首相官邸+マスメディア各社+匿名のたくさんの人々
イラクで捕まった3人に浴びせられた言葉(4月)。しかし、この言葉ほど集団的に、しかも無責任に発せられた言葉もなかったように思う。社会性動物ヒトの姿がよく見えました。
(第3位) 「単純な国民」
受賞者:奥田碩氏(日本経団連会長)
牛丼販売停止日に店に並んだ人々について、日本の財界のトップは「単純な国民だ」と切り捨てた(2月)。フィールドワークもしないでこういうことを言い放つとは、実に単純な観察者であります。「人類学」再履修してください。
(特別賞)「私のヤギさん」
受賞者:ジョージ・W・ブッシュ氏(アメリカ大統領)
9・11テロの瞬間に氏が小学校の教室で読んでいた絵本。マイケル・ムーア『華氏911』で、その光景が世界中に暴露されてしまった(日本公開: 8月)。氏のちょっと抜けたような言動は、実は巧妙な演技なのでは?と私は勘ぐっている。

来年も、言葉との出会いが楽しみです。


2004年12月10日 (金)

■電車の中でつい見てしまうもの

「電車の中でつい見てしまうものは?」

車内にこんなポスターがあった。これは広告会社の宣伝なのだけれど。はて、私は毎日電車で何を見ているんだろう。

(1) 携帯の画面
 >かならずメールをチェックする癖がある。
(2) 隣の人の新聞の見出し
 >ニュースが目に飛び込んでくるんですよね。
(3) 人々の挙動
 >つい人間観察してしまうのは、人類学者の悪癖。

さて、みなさんはつい何を見てしまいますか?


2004年12月1日 (水)

■通勤電車のたらばがに

ある朝、一時間目の授業に向かうべく通勤電車に乗っていたときのこと。スーツ姿の初老の男性が、大きなたらばがにの箱を抱えて乗ってきた。

お歳暮かな。いや、包装もしないで贈り物というのは合わないし。
お店に納品かな。一個だけ納品というのも変な感じ。

男性は、周囲の乗客に謎を残して、悠然と駅で降りていった。



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