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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2005年10月

日本語 / English / Français
最終更新: 2005年10月30日
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■『手話でいこう』毎日新聞全国版の書評に (2005/10/30)
■通帳を、ありがとう (2005/10/26)
■減量しないといけない職業 (2005/10/24)
■多言語のバス (2005/10/21)
■季節の変わり目に生まれて (2005/10/20)
■どーも、専門社会調査士です (2005/10/17)
■ヨーちゃんと暮らす日々 (2005/10/16)
■旦那はおまけか (2005/10/12)
■天空の城アメリカ (2005/10/11)
■リスザルにメガネを取られる (2005/10/10)
■いちいちアフリカと比べるか (2005/10/09)
■きしむすし屋 (2005/10/08)
■アパルトヘイトの予感 (4) タギエフの警句 (2005/10/07)
■アパルトヘイトの予感 (3) 独立の絵を描くのはだれか (2005/10/06)
■アパルトヘイトの予感 (2) 南アの分離発展 (2005/10/05)
■アパルトヘイトの予感 (1) ガザからの撤退は朗報か (2005/10/04)
■手話で生物学はいかが (3) 入り口の壁 (2005/10/03)
■手話で生物学はいかが (2) DNAにミトコンドリア (2005/10/02)
■手話で生物学はいかが (1) 一通のメール (2005/10/01)


2005年10月30日 (日)

■『手話でいこう』毎日新聞全国版の書評に

拙著『手話でいこう』が、今朝の毎日新聞全国版の書評欄で紹介されました。

一晩でアマゾンのランクが2ケタ上がりました。目がくらむ思い。今さらながら思い知る、新聞の力です。

ご尽力くださった担当記者、関係各位、そして、全国の毎日新聞の読者9,296,323人のみなさま(毎日新聞社広告局による推計)のおかげです。

ありがとうございました。


2005年10月26日 (水)

■通帳を、ありがとう

「紙幣を、お取りください」
「通帳とカードを、お取りください」
「ありがとうございました」

銀行のATMは、よくしゃべる。でも、こちらが素早く操作すると、セリフの断片がつながって変なことになる。

「通帳とカードを、ありがとうございました」

こら。君にやった覚えはないよ。


2005年10月24日 (月)

■減量しないといけない職業

仕事がら、減量しないといけない人たちがいる。ボクサー、モデル、俳優/女優など。スポーツや芸能系の仕事に多いと思っていた。

最近、もう一つあることを知った。それは、僧侶。

僧侶というのは正座の仕事だ。重くなったら、足がしびれてしまって仕事にならない。だから食事にはいつも気を使っている、と知人の僧侶が言っていた。なるほどねえ。

将棋、囲碁、茶道に華道。正座仕事の人で、巨体を見ることは確かに少ない。実はそういう努力があったんですね。


2005年10月21日 (金)

■多言語のバス

週に一度、外国語大学に講義に行っている。

駅から大学まで30分ほどバスに乗るが、この大学の学生が多く乗っているこのバスがおもしろい。一人一人、使う言葉が違うのだ。

私の隣に座っている学生は、英字新聞を読んでいる。その前の人はフランス語の本を開いている。その隣は中国語のノート。立っている人は、スペイン語。バスの中の会話も、中国語や英語や、その他いろいろ。私の知らない言語も聞こえてくる。

こんなに一人ずつ言語が違うバスというのを、私は見たことがない。世界の広さを味わえる30分だ。

でも、このバスで手話を話す人たちを見たことがないなあ。なぜだろう…? 私は、バスの中で日本手話で独り言をつぶやきながら、時々そう思う。


2005年10月20日 (木)

■季節の変わり目に生まれて

私の誕生日は、ちょうど夏から秋に変わる、今頃の季節にある。

季節の変わり目に生まれてよかった!という発見があった。それは、家の近くのクリーニング屋の「バースデー割引」だ。誕生日近くに洗濯物を持ち込むと、なんと30%割引になる。これで夏物を一気に片付けることができる。いい季節に生まれたものだ。

春が終わる衣替えの頃にも、もう一回誕生日があればいいのになあ。とアホなことを考えていた。


2005年10月17日 (月)

■どーも、専門社会調査士です

専門社会調査士 「専門社会調査士」の認定を受けた。平たく言えば、社会調査のプロということで、社会学系の学会がつくった新しい資格である。

ちなみに、社会調査士資格認定機構の事務局は、私の勤務先の大学に置かれている。というか、私の研究室の真向かいにある。給湯室で入れたコーヒーを持って廊下をうろうろしていると、「おはようございまーす」とさわやかにあいさつしてくれるスタッフの方々。どうもお世話になりました。

昨日、認定証が届いた。賞状タイプかと思ったら、なんと手帳タイプだった。スーツのポケットからちらりと見せて「どーも、専門社会調査士ですが」とか言ったら、効力あるかなあ。でも、カメルーンではきっと通じないだろうなあ。

とりあえず、意味もなくポケットに入れて通勤してみたりした。


2005年10月16日 (日)

■ヨーちゃんと暮らす日々

うちでは、自家製のヨーグルトを作って食べている。

以前、ある方から「カスピ海ヨーグルト」の生きた菌をいただいた。毎晩、タッパーの菌に牛乳を注いでおくと、翌朝にはどろっとしたヨーグルトになっている。食べて減ったら、また牛乳を注ぐ。それをたやさずに繰り返す。

毎日牛乳を与えていると、なんとなくこの菌の集合体を飼っている気分になるので、いつからか「ヨーちゃん」と呼ぶようになった。

本当は、ひとつの個体ではないんだけれどね。菌ごとに数えたら100億個体くらいいることになり、うちの最大派閥になってしまうので、とりあえずまとめて「ヨーちゃん」ということにしている。


2005年10月12日 (水)

■旦那はおまけか

ある料理教室に、夫婦二人で申込んだ時のこと。電話で担当の女性職員とやりとりがあった。

職「旦那さまは奥さまにご同伴ですね。試食代だけいただけますか?」
私「あのー。私も作りたいんですけれど」
職「え、え? お二人で? あ、ありがとうございます!」

せっかく行く料理教室だ。試食だけで満足して帰れますかって。

世の男性諸君、立ち上がろう。女性たちの意識を改革するためにも、もっと厨房へ!


2005年10月11日 (火)

■天空の城アメリカ

宮崎駿監督『天空の城ラピュタ』の英語吹き替え版"Castle in the Sky"を見た。といっても、店のデモ映像をちょっと立ち見しただけだけれど。

登場人物は全員英語でしゃべるのだが、びっくりしたのは、世界征服をもくろむムスカの声がブッシュ大統領の声に似ていたことだ。

とくに、大量破壊兵器の威力を見せつけて、ラピュタ王国の復活を宣言するくだり。その演説が、あのイラク攻撃宣言にそっくりだった。思わずビデオのパッケージを手に取って、「声優:ジョージ W. ブッシュ」と書いてないか確かめてしまったくらい(もちろん別人)。

「天空の城アメリカ」かいな、と笑いながらも、ちょっと笑えなかった。


2005年10月10日 (月)

■リスザルにメガネを取られる

ペットショップでのできごと。

カゴの中のリスザルを間近でぼんやりとながめていた時のこと。ひょいっと手が伸びてきたのが見えた直後、とつぜん視界がゆがんだ。あれ…? 私のメガネが、サルに取られてしまったのだ。カゴの中でメガネをにぎりしめるリスザル。私はぼうぜん、そして、なぜか笑ってしまった。

「すいませーん。メガネ取られちゃいました」

店員を呼ぶ。お店の人は慣れた感じで他のおもちゃをあてがい、「ほーらほら、こっちよー」と言いながら、メガネとおもちゃを取り替えることに成功。

サルに大事なメガネ取られるなんて、気をつけてよ!とつれあいには怒られたが、なぜかサルにはまったく怒りを覚えなかった。うまいこと取ったなあ、こっちの負けだわ(笑)みたいな気分。

昔、大学で霊長類学の勉強をしたことがある。研究の上でもいろいろとお世話になった。そのせいか、どうもサルには全般的に甘い私なのであった。


2005年10月9日 (日)

■いちいちアフリカと比べるか

世界の国々の何かのランキングが報道されるとき、いつも思うこと。

「国債の格付けで、日本はボツワナより低かった」
「ジェンダーエンパワーメント指数で、日本はタンザニアより低かった」

比べる相手は200近くあるのに、どうしてこういうときにアフリカ諸国を引き合いに出すかなあ。ボツワナやタンザニアの達成から本気で学びたい、というのならいいけれど。

他者への蔑視を利用してハッパをかけているのだとすれば、それはたいへん失礼なことだと思います。


2005年10月8日 (土)

■きしむすし屋

つれ合いと一緒に回転ずしの店に入った時のこと。変な音が聞こえてきた。

ギギ…ギギ…ギギ…

どうやら回転ずしのレールの一部がきしんで、音を立てているようだ。私たちはすしを食べるとき、巨大な金属製の機械にへばりついているという事実を忘れているが、そのことをきしみ音が思い出させてくれた。

ギギ…ギギ…ギギ…

機械音を聞きながらすし、というのは、どうもいただけなかった。すしが流れて来るのは機械のおかげだと分かっていても、だ。つれ合いはろう者だから、平気な顔ですしをパクパク。耳が聞こえる私だけ、不快な顔をしている。

早く油をさしてください、現実を忘れるために>すし屋の店長どの


2005年10月7日 (金)

■アパルトヘイトの予感 (4) タギエフの警句

私は、パレスチナの将来について提言する権利も知識もない。ただ、時代の空気に乗っかってころころと言うことを変えるような「場当たり的な正義」はやりたくないと思う。
人種差別には二つのタイプがある。隔離・排除型と同化型だ。一方への反差別は、もう一方の差別に容易に転化する。
フランスの社会学者タギエフの警句。アパルトヘイトの総括もしないで「分離万歳」を叫んでいたら、どんなことになるか。つかのまの正義に燃えてしまいがちな私は、この警句を何べんもかみしめる。

パレスチナ国家がイスラエルから分離独立するというのは、解決方法の一つに過ぎないと思う。イスラエル国内の自治州になる手もあるし、あるいは「居座り戦術」だってあるだろう。みんなでイスラエル国民になり、議員をどんどん送り込んで多言語・多文化国家に転換させる手もあるはずである。

どの道を選ぶにせよ、すべては住民の幸福追求の手段であって、目的ではない。ニュースの消費者でしかない私たちも、このことは忘れないでおきたいと思う。

→ [アパルトヘイトの予感・終]


2005年10月6日 (木)

■アパルトヘイトの予感 (3) 独立の絵を描くのはだれか

パレスチナが、どうも占領側のイスラエルや、それを支援する諸国の描いた絵にそって「独立させられる」流れができているように、私には見える。

これまで、民衆が自分たちで領域や帰属を決めようという住民投票は行われただろうか。いつごろどこから撤退してほしいかと話し合っただろうか。イスラエルは「ガザはやる」と言いながらも、頼んだ覚えのない分離壁を各地に築いている。そのうち、イスラエルの閣議あたりで決められた領土で「独立しろ」と宣告されるのではないかなあ。

今や、イスラエルの保守強硬派の方が、パレスチナとの分離を急いでいるという話がある。早く独立させて出て行ってもらおう、さもないと子だくさんのパレスチナ人がユダヤ人口を追い越し、やがてイスラエルを乗っ取ってしまうから、と言う。これ、アパルトヘイトそのものです。

パレスチナの人たちは幸せになれるのかなあ。狭い土地を与えられ、これで満足しろ、さもなくば…と銃口を向けられたとき。

[つづく]


2005年10月5日 (水)

■アパルトヘイトの予感 (2) 南アの分離発展

「白人による白人のための国」だった、南アフリカ共和国。たった2割の白人たちが国家を独占し、8割の住民に人権を与えなかったこの国の政府は、ある時期から黒人たちを国家として独立させることを思いついた。

わずかな領土を黒人たちに与えて自治をさせ、独立国とする。黒人有力者たちの野心をそこに縛り付け、国内では参政権を与えずに済ます。つまり、厄介払いである。

領土、資源、インフラのほとんどは、あいかわらず白人国家が独占した。その中で暮らし続ける黒人たちも、「独立国」から出稼ぎに来る黒人たちも、みな「外国人」だと称して、監視と弾圧を正当化した。これを「分離発展」と呼んでいた。

もちろん、この制度はすでに廃止され、今は全人種が参加するひとつの南アフリカ共和国になっている。「分離発展」はアパルトヘイト(人種隔離政策)という愚かな歴史の一コマだったと語られる。

権力を握る側の都合で「分離独立」のレールが敷かれるとき、それは限りなく「排除」に近い意味を帯びることがある、というのが教訓だ。はて、イスラエル統治下のパレスチナは?

[つづく]


2005年10月4日 (火)

■アパルトヘイトの予感 (1) ガザからの撤退は朗報か

「イスラエル、ガザから撤退」

2005年8月、メディアはこのことを朗報という雰囲気で伝えた。うん、、、確かにパレスチナの人たちは喜んでいるようだし、イスラエルの穏健派も大方は支持しているらしいけれど。

イスラエルが撤退 → パレスチナ人の自治確立 → パレスチナ独立国家樹立

これで戦争が終わり人々に幸せが訪れる、というのが大方の期待なのかもしれない。でも、私には「これでよかった!」と言いにくい、不穏な予感がしている。

実は、20世紀にも似たようなできごとがあったのです。南アフリカで。

[つづく]


2005年10月3日 (月)

■手話で生物学はいかが (3) 入り口の壁

「手話で生物学」って面白い!というだけでは、この話は終わらない。生物学系の多くの大学が、ろう者を門前払いしてきたという現実がある。

先に紹介したサイトの中に、受験拒否の実例を紹介するページがある。

「お引き受けしかねる」「入学は不可能」「合格させない」…

試験する前から、ろう者はこういうことを言われてきたのですね。ちなみに、日本にはこういうことを禁じる法律はない。

「手話で生物学」というのは、たしかに面白そうだけれど、同時にそういう学問的営みがきちんと大学で公認されなければ。耳の聞こえない学生や研究者たちの才能がフェアに評価される時代が、一刻も早くきますように。

[手話で生物学はいかが・終]


2005年10月2日 (日)

■手話で生物学はいかが (2) DNAにミトコンドリア

いちおう動物学出身の私は、生物学系の手話に興味がある。

私 「たとえば『DNA』や『ミトコンドリア』っていう手話はあるんですか?」
会員「はい。『DNA』は両手の指二本で二重らせんの形を示します。
   『ミトコンドリア』は『ミ』という指文字の後に
   両手でミトコンドリアの形(へこんだ球状)と表現しています。
   手話の生物学用語は、話し合って作っていきたいですね」

う…ん。即答です。へぇ。

こういう手話の専門用語が、ろう教育や通訳者養成機関、そして大学にもどんどん浸透するといいですね。若いろう者たちが学問に関心をもつためにも、専門知識をもった手話通訳者たちが大学院や学会などで活躍するためにも。

[つづく]


2005年10月1日 (土)

■手話で生物学はいかが (1) 一通のメール

生物学系のろう者や、その関係の人たちが集まるサイトがある。ある日、メールでご紹介をいただいた。

正式名称:
「生命科学(医科学・薬学・農学・生物学・生物科学・バイオテクノロジー関連)系の研究・技術部門に就くろう者,難聴者,聴覚障害者とそれに理解のある健聴仲間との集まり・交流の場」

(長いですね^^;)

「亀井さん、生物学系ですよね」と言われた。まあ経歴上はそうですが、これまで研究したのはほとんどHomo sapiens(ヒト)のことばかり。今は社会学に勤めているし、はたして生物学系と言っていいものかどうか…。

でも、ご案内どうもありがとう。

[つづく]


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