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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2006年6月

日本語 / English / Français
最終更新: 2006年6月30日
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■大言語の責務 (2006/06/30)
■ノルウェー日記2006 (8) サポーターに囲まれて (2006/06/25)
■ノルウェー日記2006 (7) ムンクの前で (2006/06/24)
■ノルウェー日記2006 (6) ノルウェーろう者協会訪問 (2006/06/23)
■ノルウェー日記2006 (5) 日本はどんな国? (2006/06/22)
■ノルウェー日記2006 (4) 夏至をむかえて (2006/06/21)
■ノルウェー日記2006 (3) アフリカとヨーロッパ (2006/06/20)
■ノルウェー日記2006 (2) オスロ市庁舎にご招待 (2006/06/19)
■ノルウェー日記2006 (1) 世界一幸せな国へ (2006/06/17)
■ノルウェーに行ってきます (2006/06/15)
■美しきデータベース (2006/06/12)
■英検を受けるお子様たち (2006/06/11)
■ビールのボトルキープ (2006/06/08)
■絵馬の個人情報 (2006/06/04)


2006年6月30日 (金)

■大言語の責務

国際会議で苦労した日本語話者のつぶやき。

ベルギー人とノルウェー人とデンマーク人とウガンダ人とケニア人とフランス人と日本人が飲みながらわいわいと話すと、会話は英語になる。しかも、アメリカ人やイギリス人の言い回しより分かりやすいから面白い。

アメリカやイギリスのことは忘れて、ただのコミュニケーションツールとして、英語は使えた方がよい。というか、英語が使えないと仕事にならない。

「ネイティブがえらい」「言語を学ぶなら文化も学べ」というのは、言語を学ぶ時に強調されることだし、たぶん合っているだろう。しかし、英語にかぎってはこのルールを撤廃したい。英語はもはやネイティブ・スピーカーが独占してよい言語ではなく、英米文化にまったく興味がない人々が使う権利をもつ言語である。

非ネイティブ英語使用者が連合して、英米人にクレームをつけたいね。「君たちネイティブの英語は分からん。もっとみんなに分かるように話せ」と。大言語の中で育ったという恩恵に浴している以上、そのくらいの責務は負っていただきたいと思うのだ。


2006年6月25日 (日)

■ノルウェー日記2006 (8) サポーターに囲まれて

ノルウェー1週間の滞在を終えて、帰路。

ヨーロッパだけ訪れて帰るというのは、実は今回が初めてだ。ふだんは、ヨーロッパはアフリカに行くときの経由地だから、途中で引き返して帰るような感覚が残る。

今回の出張は、ちょうどワールドカップドイツ大会に重なった。行きの便は日本-クロアチア戦の前日だったから、サポーターに囲まれた。帰りは日本-ブラジル戦の翌日だったから、またも空港でサポーターにぐるりと囲まれた。

帰りの機内はいつもながら、仕事、仕事。日本に着くまでにノートと名刺を整理しておかないと、だれがだれだか忘れてしまうからね。サービスのワイン片手に、今回知り合うことができた研究者たちの人名録をつくっていたのだった。

付記:アフリカ言語・教育会議の詳細は、日本アフリカ学会『アフリカ研究』に報告文を寄稿する予定です。

→ [ノルウェー日記2006・終わり]


2006年6月24日 (土)

■ノルウェー日記2006 (7) ムンクの前で

最終日の夕方にわずかな時間ができたので、国立美術館を訪れた。ノルウェーはムンクの故郷で、ここにはそのコレクションがある。

ムンクの『叫び』を見た。名画の前で一瞬こっそりと「叫びポーズ」をとることができたことは、一生忘れられない想い出になるだろう。

ある母親が子ども(2-3歳くらい)に向かって、『叫び』を指さしながら熱心に語りかけていた。

(これがノルウェーが誇る名画なのよ)
(試験に出るから覚えておきなさい)
(あんな変な日本人のまねをしてはだめよ)

…と言ったかどうかはさだかではない。ただ、子どもは興味なさそうだった。

[つづく]


2006年6月23日 (金)

■ノルウェー日記2006 (6) ノルウェーろう者協会訪問

会議スケジュールの合間をぬって、ノルウェーろう者協会を訪問。

アフリカろう者の支援に関わってきた北欧のろう者団体には興味があったから、ありがたい機会だった。会長自らが時間をさいてくれ、アメリカ手話と国際手話と指文字のちゃんぽんで、密な雑談をした。

帰ろうとした時、隣の部屋から呼び止められた。
「いま、スウェーデンとつながってるよ」
インターネットのビデオチャットだ。画面には、隣国のスウェーデンろう者協会の会長の姿が映っていた。

私「はろー。こちらオスロ」
L「スウェーデンのLです」
私「私は日本のカメイ。名刺をどうぞ」(とカメラに名刺を出す)
L「あ。どうも」(と名刺を受け取る…ふり)

ビデオごしの「名刺やりとりコント」にとっさにつき合ってくれたL会長に感謝。いつかじかにお会いできることを楽しみに。

[つづく]


2006年6月22日 (木)

■ノルウェー日記2006 (5) 日本はどんな国?

「世界語としての英語」という分科会。グローバル化の今日、アフリカでの教育で英語が重要かどうか。

ノルウェーの先生はこう主張した。
「私は日本に行きましたが、講演の時はいつも通訳が要るんです。
 英語が世界語なんて大まちがい! 通じない所があるんですから」
ほめられたのか、けなされたのか、よく分からない。

タンザニアの先生はこう主張した。
「英語、英語って言うけれどね、みなさん。イギリスが何をしてくれている?
 今タンザニアは、日本製と中国製のものばかりじゃないか」
日本語はともかく、メイド・イン・ジャパンはあふれているようです。

議論の中身はいいけれど、「日本」ということばが出るたびに会場の視線が私に集まるのは、どうにも困ってしまった。苦笑いするしかないよね。

[つづく]


2006年6月21日 (水)

■ノルウェー日記2006 (4) 夏至をむかえて

北緯60度のこの町で、夏至を迎えた。

「うわ、西日きつい…」時計は21:00。
「日も沈んだし、ぼちぼち帰るか」23:00。
「しまった、もう明るい!」午前3:30。

この国にいると、明るくなっても平気で寝続ける癖がついてしまいそう。

ところで、ノルウェーの名物はサーモン。パーティなどでもよく出たから、話のネタにしようとする。

私「ノルウェーのサーモンはおいしいですねえ」
M「…いいえ、これは違うわ」
私「え。これ、ノルウェーじゃないんですか」
M「たぶんね。味が違うから」

酒に、ではなく、鮭にうるさい人たちであるらしい。

[つづく]


2006年6月20日 (火)

■ノルウェー日記2006 (3) アフリカとヨーロッパ

この会議の特徴の一つは、アフリカの手話言語に関する発表が多かったこと。エチオピア、ソマリア、ウガンダ、タンザニア、ナイジェリア、南ア、仏語圏西アフリカ…。少数言語である手話の研究の躍進は、喜ばしいかぎり。

アフリカの研究者たちは
「手話ができる教員が足りない。教材も学校も足りない。もっと手話を!」
と叫んでいる。

一方、ヨーロッパの研究者たちは
「うちの国では、80-90%のろう児たちが人工内耳手術を受けます」
「うちもですよ」
「どうしたら手話をもっと認めさせることができるか」
どうにも会話が暗いのである。

手話という「もうひとつの人類の言語文化」の広がりと豊かさが十分に認められないまま、リッチな国の医療は、ろう者の言語と文化をブルドーザーで押しつぶそうとしているかのようだ。

アフリカは、そういう「豊かすぎるがゆえの悩み」は当面起こりそうにない。「とにかく、もっと手話を!」という大陸なのである。

[つづく]


2006年6月19日 (月)

■ノルウェー日記2006 (2) オスロ市庁舎にご招待

アフリカ言語・教育会議 (LEA2006)は、オスロ大学が主催する国際会議。21ヶ国から参加者が集まる大規模な会議である。

会議の初日、参加者がみなオスロ市庁舎でのレセプションに招待された。毎年12月にノーベル平和賞の授賞式を行う、あの荘厳な建物だ。オスロ市長が自ら立って一人一人を出迎える。

このパーティーでの大物との出会いといえば、西アフリカ・マリ共和国の文部大臣とさしで話したことだろうか。

大「あんた、どんな仕事を」
私「西アフリカのろう者と仕事してます」
大「うちとこのろう学校、人手が足りなくてな」
私「こんどいっぺん行きますわ」
大「うむ、よろしく。メルシー」

市庁舎の館内ツアーガイドも付いて、マンデラもアラファトも金大中も訪れたこの場所を見学させてもらった。

「ありがとう。次は12月に呼んでくれい(笑)」

酔っぱらいの一人ギャグ(日本語)につっこむ人はおらず、オスロの夜はふけていく。

[つづく]


2006年6月17日 (土)

■ノルウェー日記2006 (1) 世界一幸せな国へ

ノルウェーは「世界一幸せな国」と見られることがある。国連の人間開発指数、つまり、収入・健康・教育の点数を足して3で割ると、世界ランキングでトップになるんだという。

・駅の公衆トイレ料金=200円
・地下鉄初乗り=400円
・ハンバーガー屋のセット=1,800円(…)

この国に予備知識のないまま迷い込んだ旅行者(=私)は、なにげなく入ったハンバーガー屋の兄ちゃんが告げた値段に不意打ちをくらい、かなり不幸な気持ちになりました。

学会のため、初めて訪れたノルウェーの風景を連載します。

[つづく]


2006年6月15日 (木)

■ノルウェーに行ってきます

ノルウェーに行ってきます。

オスロ大学で開かれる Languages and Education in Africa (LEA2006)(アフリカ言語・教育会議2006)という国際会議に参加するためです。

大会公用語は、英語、フランス語、ノルウェー手話の3つ。それに、オプションでアメリカ手話もあるとか。…おや、ノルウェー語はないんですね。

「アフリカの手話言語」というのが、この大会のテーマのひとつで、どんな発表に出会えるか楽しみです。

「ノルウェーの通貨って何だっけ…?」
「コンセントの形は…?」
…今頃、あわてています。

帰国したら「ノルウェー日記」をアップしますね。しばし、ごきげんよう。


2006年6月12日 (月)

■美しきデータベース

新書マップというデータベースをご存知ですか。

美しくて便利。本来探そうと思っていた本のことを忘れて、つい遊んでしまいます。

本好きのみなさん、一度おためしあれ。


2006年6月11日 (日)

■英検を受けるお子様たち

英語学習の低年齢化が進んでいる、という話を聞いたので、英検のサイトを見てみた。

たしかに。3歳で、4級や5級に合格している子どもたちがいる。11歳で1級突破だって。すごいねえ。

一方で、こういう悩みもあるみたい。

年少者の受験についてのお願い

<最近の主な事例>
(1)解答用紙の記入欄に、生年月日や名前(漢字)、会場名等が書けない。
(2)問題の指示文が読めない。
(3)試験中、飽きてしまって、鉛筆を転がしたり騒いだりし出す。

英語ができても、日本語ができないお子様たちがいるんですね。

英検協会は、うちで名前を書く練習をしてきましょう、と呼びかけています。日本語も、がんばろうね。それと、お行儀もね。


2006年6月8日 (木)

■ビールのボトルキープ

知人と居酒屋に入った。

私「じゃあ、まずビール頼もうか」
知「あ、それならボトルがあるから」
私「…」

そこで目が覚めた。夢でよかった。


2006年6月4日 (日)

■絵馬の個人情報

神社に行くと、たくさんつるされている絵馬を見ることがある。いろんな人生、いろんな願い、いろんな情念がうずまいている。

はて。これって、もろ個人情報ではないか、と気づいた。自分で公開しているんだからかまわない、というので基本的にはいいと思うけれど、

「うちの娘○子に良縁がありますように」
「うちの息子□夫が△大学に受かりますように」

本人の同意を得ていなさそうなものもありますよ。



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