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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2007年7月

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最終更新: 2007年7月28日
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■わが衣手にネタはふりつつ (2007/07/28)
■雨ニモ負ケズ@若手研究者 (2007/07/26)
■原稿をすぐ書く人の卓見 (2007/07/22)
■安倍首相が見すえるもの (2007/07/20)
■縦割り行政の家 (2007/07/17)
■難聴者のインタビュー (2007/07/13)
■「偽装牛丼」の前で (2007/07/11)
■コミュニケーションに忙しい一日 (2007/07/09)
■非常識ボックス (2007/07/04)


2007年7月28日 (土)

■わが衣手にネタはふりつつ

日々、雪のようにわが身に降り積もるもの。

仕事。依頼、確認、問い合わせ。有償/無償をとわず、昼/夜をとわず。

メール。「至急」のメール、「お願い」というメール、「進捗はいかが」というメール、スパムメール。日々、しんしんと積もっていく。

紙類。資料、教材、手紙、ニュースレター、チラシ。時々、雪かきならぬ「紙かき」をしないと、研究室が埋まってしまう。

本。専門書から、新書・文庫、雑誌まで。情報のフローがないと息絶えてしまう生き物である研究者は、積もりゆく本の中を泳ぎ続ける。

ネタ。日記に書こうかな、原稿に書こうかな、授業でしゃべろうかな。ネタをメモに書き出していると、うず高いネタの山ができる。ここに掲載されるのは、そのうちのごくわずかです。


2007年7月26日 (木)

■雨ニモ負ケズ@若手研究者

ほうぼうをかけずり回る研究者渡世。ふと口をついて出た。
雨にも負けず 風にも負けず

東にシンポジウムあれば 行ってパワーポイントをご披露し
西にワークショップあれば 行ってコメンテータをお引き受けし
南に集中講義あれば 行ってしゃべってレポートを読み
北に懇親会あれば 行ってあいさつして名刺を配り

日照りの夏は ノートパソコンもってふうふう歩き
寒さの冬は こたつでメールチェックして原稿を書き

ほめられもせず 苦にもされず
そういう者に 私はなりたい

…かどうかは別として。

この3年ほど、ほぼ同世代の若手研究者たちと断続的な共同研究をしてきて、その成果のデータを集める機会があった。

みんな、あくせくと地道にがんばっていますよね。ミリオンセラーを放ってブームを起こすような派手なものとはちがうけれど、このような若手研究者たちの「含み益」は相当なものだ。そう信じています。

丈夫な体をもち 欲はなく 決していからず
いつも静かに笑っている
うん。丈夫なのがとりあえずの値打ちかな。(笑)


2007年7月22日 (日)

■原稿をすぐ書く人の卓見

私の畏友(おそるべき友人)、I 君と飲んでいた時のこと。

I「ぼくは、原稿依頼があったその日に、だいたい書いてしまうね」

絶句。なんでそんな神業のようなことができるんだろう。

だいいち、依頼があったその瞬間に、すでにネタをそなえているということ自体が信じられない。ふつう、それからゆっくり調べ物をしたり読んだりして、じっくりと完成させるものでしょう。

I「いや、違うね。依頼する側は『今のぼく』を見て原稿を頼んでくれるんだ。『将来書けるかもしれないもの』なんかに期待していないんだから」

けだし、名言かな。

けちな見えっぱりである私は「自分がこれから何をすることができるか」を示したいとばかり考え、成長の夢を見て、いたずらに作業を引き延ばす。半年たってみて、まるで成長していない自分に気づいて愕然とすることもある。そんなことのくり返しだ。

今の自分の価値がどれほどかを率直に見さだめ、旬のうちに時価で売りさばいていくことの重要さを、この友人の卓見のひと言から学んだ。

(もう1冊読んでから…)(もう1回調査に行ってから…)

いやいや。そうしているうちに時価が下がっていくかもしれませんよ。


2007年7月20日 (金)

■安倍首相が見すえるもの

選挙たけなわの夏です。

ポスターでは、安倍首相が「ななめ上方の何物か」を見すえています。

[クイズ]彼が見すえているものは何でしょうか?

(1) 成長する日本経済
(2) 上がっていく消費税
(3) 次の総裁のイス

答えは…党本部に聞いてみましょうか。


2007年7月17日 (火)

■縦割り行政の家

変な家があった。家中の電気のコンセントが「縦割り行政」になっているのだ。

「ここの電源は、厚生労働省の管轄」
「ここの電源は、農林水産省」
「ここは文部科学省」

業務の目的に合う時だけ、電気が供給される。

私がパソコンで手話についての原稿を書いていたら、電源が落ちてしまった。なぜだろう? 調べてみたら、そこは文部科学省のコンセントだった。

といあわせる。

「どうして手話だと電源が落ちるんですか」
「あ、手話は厚生労働省の管轄ですから」
(いったい、なぜ…!?)

腹が立ったところで目が覚めた。これ、本当に見た夢です。


2007年7月13日 (金)

■難聴者のインタビュー

ある難聴の方の取材を受けることがあった。

たまたま口話で話すことを望む人だったので、私は口の動きをはっきり見せながら話した。相手が下を向いてノートを書いている時は話をやめて待ち、顔を上げてこちらを見たら話す。そのくりかえし。

取材が終わりかけた時に、このインタビュアーが言った。

「私がノートを書いている間も、話し続けてしまう人って多いんですよ。悩みの種です」

私もことさら意識したわけではないけれど、聞こえない/聞こえづらい相手がこちらを見ていない時は、話さずに待つものだと自然に思っていた。だって、相手がこちらを見ていなければ、話したってムダじゃないですか。

私はその感覚を、ろう者との手話の会話の中で覚えたのだと思う。相手の視線を感知したら話すし、そうでなければ待つ。手話にはそういう繊細な「待ちのマナー」がある。聴覚-音声言語のように「しゃべれば相手に届くだろう」と勝手に期待する、侵入的な会話のスタイルとは違う世界がある。

そういう手話会話のルールが、難聴者相手の音声会話でも応用できるらしい。うん、これは興味深い発見。


2007年7月11日 (水)

■「偽装牛丼」の前で

丼屋に行った。「牛丼ひとつください」。

運ばれてきた牛丼を見て、私は黙りこんだ。それが豚丼のように見えたからである。

じっと観察した。白っぽくてつるっとした平たい肉片は、豚肉のように見える。ぷうんと鼻にくるこのにおい、たぶん豚肉だろう。一切れつまんで口に入れてみると、味は豚肉のようだし、舌ざわりのぱさぱさとした感じもやはり豚肉にちがいない。聴覚以外の四感を総動員して出した私の結論は「これは豚肉である」。

(これは豚では?)(でも私の勘違い?)(いや、やっぱりおかしい)

念のため、もう一切れ口に入れてかんでみた。まちがいない。3分間の検証と迷いの末、意を決して店員を呼び止めた。

私「これ、豚丼ではありませんか?」
店「ええ、そうですけど」
私「牛丼を頼んだんですが」
店「あ、すみません! すぐにお取り替えします」

「偽装」というほどの悪意はなく、店員の単純ミスだった。やがてやって来た牛肉は、比べてみると確かに豚肉とはまるで違うものだった。

この肉は牛肉か、豚肉か。分かっているようで、いざ問われると自信がなくなるものだ。しかも堂々と持ってくるものだから、こっちがまちがっていたら恥ずかしいというアホな見栄もはたらく。結果として私の判定にまちがいはなく、何重もの意味でホッとした。

「牛肉ミンチ」だと偽りつつ、豚肉をまぜて売っていた業者があった。そして、それを牛肉と信じて何十年間も食べ続けた消費者がいた。その消費者を笑えないと私は思う。

「偽装牛丼」と向き合った冷や汗の3分間。自分の力がためされた緊張の昼ごはんの機会に、いろいろなことを考えた。


2007年7月9日 (月)

■コミュニケーションに忙しい一日

今日は人との約束が多く、たいへん多忙な一日だった。

しかも不思議なことに、会う人ごとにコミュニケーションの様態が異なる一日だった。聴者、難聴者、日本のろう者、諸外国のろう者。こんなに多彩な一日というのも珍しい。

・聴者とは、声だけの日本語でぺらぺらとしゃべる。
・手話が少し分かる難聴の人とは、ゆっくりはっきりと口を示す口話に、大きめの手話やジェスチャーを添えながら。
・日本のろう者とは、日本手話だけでぱっぱっとしゃべる。
・諸外国のろう者たちとは、今回はアメリカ手話での会話になった。

1〜2時間ごとに会話モードのチャンネルを切り替える。あわせて、話題や慣習や世界観のチャンネルも切り替える。実に不思議な一日だった。

さて、明日はいったいどんな出会いがあるだろう。


2007年7月4日 (水)

■非常識ボックス

大学の同僚の教員に、書類を届けようとした時のこと。

事務室に並んでいる、非常勤講師用のメールボックス(非常勤ボックス)にそれを届け、携帯メールでそのことを知らせた。

「○○は、非常識ボックスに入れましたのでお確かめください」

読み返してみて、冷や汗。「非常勤ボックス」と打ったつもりが、「非常識ボックス」になっているではないか。

最近の携帯は親切だ。「ひじょう…」くらいまで打てば、変換する語句の候補をいくつか挙げてくれる。私が無意識的に選んだのが「非常識」だったというわけ。

「訂正『非常勤ボックス』です。他意はございません。ごめんなさい」

相手が笑って流してくれたのが幸いだった。



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