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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2007年12月

日本語 / English / Français
最終更新: 2007年12月31日
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■うらごしのとしこし (2007/12/31)
■マイ重大ニュース2007 (2007/12/30)
■アフリカ重大ニュース2007 (2007/12/29)
■人類学的に気になるキーワード2007 (2007/12/26)
■手話にがんばっているビール工場 (2) 見学コース篇 (2007/12/25)
■手話にがんばっているビール工場 (1) 電話対応篇 (2007/12/24)
■車の窓を開けた営業マン (2007/12/23)
■初めて語った自分の研究史 (2007/12/22)
■ミサイル防衛とサンタさん (2007/12/21)
■手帳のプレゼント (2007/12/20)
■社長の説教 (2007/12/19)
■ピクトは楽し (2007/12/17)
■お持ち帰りです (2007/12/16)
■老後の楽しみ (2007/12/15)
■禁煙になります (2007/12/13)
■ネタも積もれば山となる: 祝!ジンルイ日記500件 (2007/12/12)
■エンパワーは円パワー? (2007/12/11)
■夢の国際会議場 (2007/12/10)
■愚民を恐怖する選良のまなざし (2007/12/09)
■パートと内部告発 (2007/12/08)
■研究会ミシュラン (2007/12/07)
■手帳の引越し (2007/12/06)
■フィリップの贈り物 (5) 天国で手話講座 (2007/12/05)
■フィリップの贈り物 (4) ワフォとともに (2007/12/04)
■フィリップの贈り物 (3) 遺影となった手話映像 (2007/12/03)
■フィリップの贈り物 (2) 手話で遊ぶな、プロであれ (2007/12/02)
■フィリップの贈り物 (1) 突然の訃報 (2007/12/01)


2007年12月31日 (月)

■うらごしのとしこし

2007年の大晦日、みなさまはどのような年の瀬をおすごしでしょうか。私は久しぶりに「うらごしのとしこし」を迎えています。

二色たまご(錦たまご)という正月の一品がある。

■■■■ (←黄身)
□□□□ (←白身)

という構造をした、卵の白身と黄身で作った甘いお菓子。何年かぶりに、大晦日にこれを作るのに挑戦することになった。

卵をゆで、白身と黄身に分離して、ペタペタとしゃもじでうらごしをする。ゆで卵のうらごしという単純作業を黙々と続けながら、静かにこの一年と人生とを考えた。

この世のすべての人類たちとゆで卵たちに幸いあらんことを。みなさま、どうかよいお年をお迎えください。


2007年12月30日 (日)

■マイ重大ニュース2007

この1年、みなさまにおかれましては、どのようなドラマがありましたでしょうか。備忘録代わりに、マイ重大ニュース3つを記しておこうと思います。

(1) 東京外大に転職、17年半ぶりの関東暮らし [関連日記]

(2) 国際開発学会奨励賞いただく [関連日記]

(3) ジンルイ日記500件達成 [関連日記]

アホなことでもがんこに続けていれば意味がある(かもしれない)。そんなことを思ったこの一年です。お引き立てくださいました各位に感謝しつつ、今年を終えていきます。来年もどうかよろしくお願い申し上げます。


2007年12月29日 (土)

■アフリカ重大ニュース2007

私見で選んだ「アフリカ重大ニュース2007」をお届けします。今年のニュース選びにあたっては、とくに立命館大学内のサイト arsvi.com を多く参照したことを、感謝とともに付記いたします。

[2007年1-3月] [2007年4-6月] [2007年7-9月] [2007年10-12月]

(1) ガーナ独立50周年
1957年3月6日、サハラ以南アフリカの植民地の中で先陣を切って独立を宣言したガーナ共和国が、独立50周年を迎えた(3月)。3月6日に首都アクラで行われた記念式典には、近隣12カ国の首脳、世界銀行ウォルフォウィッツ総裁、日本の杉浦正健特派大使(衆議院議員、前法務大臣、日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟事務局長)らが参列した。
(2) ソマリア内戦に米軍介入、AU平和維持部隊が派遣される
2006年末にエチオピア軍とともに首都モガディシュを制圧したソマリア暫定政権が、それまでの実効支配勢力であったイスラム法廷会議に対する勝利宣言を行う(1月)。一方、アメリカはイスラム法廷会議へのアルカイダの関与を断定し、武力行使に踏み切った(1月)。AU首脳会議では国際平和維持部隊の派遣が決定(1月)、ウガンダ軍がソマリア入りしたが(3月-)、駐留を続けるエチオピア軍と武装勢力の間では衝突が続き、モガディシュの掃討作戦では1000人をこえる死者が出た(3-4月)。
(3) ナイジェリアでヤラドゥア新大統領が就任
ナイジェリアで大統領選挙が行われ、ウマル・ヤラドゥア氏が当選(4月)、5月に就任した。1960年の独立以来初めて、直接選挙による大統領交代が実現。2期8年を務めたオルセグン・オバサンジョ前大統領の後継者となるヤラドゥア氏は、汚職問題や民主化などの課題に取り組む。
(4) コーヒー商標をめぐりエチオピアとスターバックス合意
スターバックス社がエチオピア産コーヒー豆の商標を登録することに合意、2年越しの論争が幕を閉じた(6月)。エチオピア政府は2005年、日本、アメリカ、カナダ、EUでコーヒー豆の「シダモ」「ハラー」「イルガチェフ」の商標登録申請を行っていたが、アメリカ特許商標局が登録に反対する全米コーヒー協会を支持して登録出願を却下(2006年8月)、論争が続いていた。
(5) チャドで「ゾエの箱舟」事件
フランスのNGO「ゾエの箱舟」が、チャドの幼児103人を国外に連れ出そうとしたことが発覚、活動家らがチャド当局に逮捕された(10月)。ダルフールの孤児を救援するという主張とは異なり、多くは両親のいる誘拐された子どもたちであった。6人の被告には幼児誘拐未遂罪などで、8年間の重労働と41億2000万CFAの損害賠償の支払いが命じられたが、フランスの要求にチャド政府が応じて本国に送還された(12月)。
(6) 南ア与党ANC、議長にズマ氏選出
南アフリカ共和国の与党アフリカ民族会議(ANC)の議長選で、ジェイコブ・ズマ副議長(前副大統領)が現職のタボ・ムベキ議長(大統領)を破って当選(12月)。次期大統領への就任が有力となった。汚職疑惑などで捜査対象となっていたズマ氏だが、黒人貧困層の支持を受けた党内左派勢力を取りまとめて勝利した。
(7) レアメタル確保に日本政府が外交攻勢
アフリカでのレアメタル(プラチナ、インジウム、コバルトなどの希少金属)の権益確保のため、甘利経済産業大臣が南アフリカ共和国とボツワナを歴訪(11月)。南ア・ムベキ大統領らと会談し、レアメタルの安定確保に向けた連携強化で合意した。ヨーロッパや中国と対抗しつつ巻き返しを図るのがねらい。
(8) サルコジ政権、アフリカ首脳の援助流用捜査へ
アフリカ諸国の首脳がフランスからの援助を私財に流用していた疑いで、パリの検事局が横領容疑での捜査を始めた(6月)。ガボン、コンゴ共和国、ブルキナファソ、赤道ギニアの大統領やその親族が捜査対象にあげられている。シラクからサルコジへというフランスの政権交代にともなう対アフリカ政策の転換のきざしとの見方も。
(9) 中国の胡錦濤国家主席がアフリカ歴訪
中国の胡錦濤国家主席が、12日間にわたってアフリカ諸国を歴訪(2月)。カメルーン、ナミビア、モザンビーク、セイシェル、スーダン、南アフリカ、ザンビア、リベリアを訪れた。エネルギー資源と中華人民共和国承認という二つの果実が目下のねらいとされる。
(10) 台湾がアフリカ諸国と初のサミット開催
台湾が、外交関係のあるアフリカ諸国の首脳を集めた初のサミットを台北で開催(9月)。2006年11月にやはりアフリカサミットを開いた中国に対抗するねらいがあるとされる。ブルキナファソ、マラウィ、サントメ・プリンシペ、スワジランド、ガンビアの5カ国首脳と「台北宣言」を採択した。あわせて開催された「台湾アフリカ進歩パートナー・フォーラム」には、中国と国交を持つケニアや南アフリカなどの関係者も出席した。
(そのほか) こんなニュースもありました。
・アフリカ連合サミット、気候変動対策を決議(1月)
・イギリスの奴隷貿易廃止200周年(3月)
・アルジェリアで連続爆発事件(4月、9月、12月)
・中国、ナイジェリアの通信衛星を打ち上げ(5月)
・独ハイリンゲンダムサミットで「世界経済」とならび「アフリカ」がテーマに(6月)
・スーダン政府、ダルフールへの平和維持部隊受入を表明(6月)、国連安保理がダルフール国連・AU合同ミッション(UNAMID)展開決議採択(7月)
・ジンバブエで外資系企業の株式の過半数を黒人に譲渡させる法案成立(9月)
・エチオピアでユリウス暦のミレニアム(2000年)祝う(9月)
・北朝鮮がスワジランドと国交、アフリカ全54カ国と外交関係樹立(9月)
・アメリカが「アフリカ軍」新設、テロ対策強化へ(10月)
・ケニア大統領選でムワイ・キバキ氏再選、暴動発生(12月)
・ケニア人の父をもつバラク・オバマ氏、米大統領選有力候補として注目集める(年中)

来年も、アフリカと世界のすべての人々に幸せが訪れますように。


2007年12月26日 (水)

■人類学的に気になるキーワード2007

2007年のユーキャン新語・流行語大賞は、「(宮崎を)どげんかせんといかん」(東国原英夫)と「ハニカミ王子」(石川遼)だとか。人びとを力づけ、また癒すことばが好まれるようですね。

しかし、へそ曲がり人類学者はそれでは満足しません。人々を悩ませ、苦笑や当惑へと誘い、ときには神経を逆なでしたことばをも記録してこそ歴史というものです。

ジンルイ日記年末恒例の「人類学的に気になるキーワード2007」、いってみましょう。

(第1位)「産む機械」
受賞者: 柳澤伯夫氏(元厚生労働大臣)
島根での自民党の集会で、柳澤厚労相(当時)が「15から50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と発言(1月)。新年早々、一斉批判の的となった。出産する身体機能をもっている人は、確かに女性の中に多いわけですが、ひっくるめて「機械」呼ばわりとは。「利己的な遺伝子」だの「裸のサル」だの、人間の尊厳を地に落とすことをねらった表現は歴史上いくつもありますが、自分を含めて自嘲ぎみに語るのがこの手のフレーズを提唱するときのマナーです。自分を含まない人類の半分の人びとを敵に回したこの人のこの発言は、今年の堂々の第1位。
(第2位)「スシ・ポリス」
受賞者: ワシントン・ポスト紙、松岡利勝氏(元農林水産大臣、故人)
農林水産省が、海外の日本食レストランの認証(支援)制度を推進(2006-2007年)。もともと日本産の農作物の輸出促進をねらったもので、松岡農水相(当時)も導入に積極的だったが、ワシントン・ポストなどの海外メディアは「スシ・ポリスが来る」などと揶揄的に報道(掲載は2006年11月)。今年も議論が続き、「日本食の定義は何か」「カレーやラーメンはどうなるのか」などと農水省有識者会議でも紛糾した。文化を国有にしようと思ったら、定義や基準をめぐってもめるのは当たり前。ナショナリズムとグロバリゼーション、国家・政策と文化、スシとジャパンに対するオリエンタリズムなど、文化人類学の多様な問題系をまとめて突きつけてくれたすてきなことば。
(第3位)「KY」
受賞者: 安倍晋三氏(衆議院議員、前首相)
「空気が読めない」「空気を読め」の意。重要な決断の時期をことごとく外したあげく、国会会期中に突然辞任してしまった安倍前首相が、KYの典型的な人物と評される(9月)。KY度診断などもはやったりして、「空気を読め」という社会的圧力は強まるばかり。ところで、空気、空気と周囲を見回すヒトたちの姿は、ニホンザルが群れの移動を察知しようときょろきょろしている光景とたいへんよく似ています。ただ、そういうことをことばにしてことさらに騒ぐのは、おそらくヒトだけです。何百万年のKYの歴史をもつ社会性動物が、ようやく自画像に気付いたということでしょうか。
(特別賞)「段ボール肉まん」
受賞者: 北京テレビ
今年、もっとも人びとの食欲を減退させたことば。中国の北京テレビが、肉まんの材料に段ボールを使っている業者についての告発報道をした(7月)。直後に、それがやらせだったとの報道が続き、一方でそれは事実の隠蔽をねらった言論操作ではないかとの憶測も流れる。中国政府によるメディア監視のきっかけともなったこと、北京五輪前のイメージアップ作戦中のできごとであることなど、政治と言論と人権のないまぜの混乱の中に、食文化がまきこまれてしまった。真相は薮の中でありながら、段ボールを食べさせられたら気分悪いわな、という印象だけが脳裏に焼き付いた。結局、私たち人間は、食べ物にしか興味がないのかもしれません。

来年も、ことばとの出会いが楽しみです。


2007年12月25日 (火)

■手話にがんばっているビール工場 (2) 見学コース篇

工場に着くと、さっそく「手話の勉強中です、よろしくお願いします」と手話で話すガイドさんが現れた。

見学コースの解説ビデオには、すべてに手話と日本語字幕が完璧に付けられていた。手話学習歴1年というガイドさんは、ゆっくりゆっくりながらも、はじめのあいさつから最後のビール試飲サービスまでを手話で通した。

立派なのは、それが「ろう者専用コース」ではなく、耳の聞こえる一般客と一緒のコースだったということだ。今回の見学では手話を使いますという姿勢を、会社が隠さずにどうどうと示していることに敬服した。

この工場では、手話で説明するガイドさんを4人用意しているという。

ガイド「手話のお客様がおみえになることは、まだ少ないようです」
私たち「じゃあ、宣伝しましょうか(笑)」

パンフやサイトには「手話でのご案内を承ります。ご予約の際にお申しつけください」と書いてある。しかも、電話番号だけでなく、申込みのためのFAX番号がきちんと示されている。見せかけのバリアフリーではなく、聞こえない客に本当に来てほしいと思っている姿勢が伝わってくるではないか。

アサヒビールの企業努力に敬意を表し、ご紹介させていただきたいと思います。手話のある工場見学というすてきなクリスマスプレゼントをくださり、ありがとうございました。

アサヒビール神奈川工場


2007年12月24日 (月)

■手話にがんばっているビール工場 (1) 電話対応篇

近所のアサヒビールの工場を見学できると知り、予約のために電話をした時のことである。

私「耳の聞こえない家族が見学に行くのですが、ご配慮はいただけますでしょうか」
ス「はい、ではスタッフが手話でご案内いたします。
  それから、手話の付いたビデオをご用意いたしますが、いかがでしょうか」
私「…(絶句)。はい、ありがとうございます。ぜひそれでよろしく」

なぜ絶句したか。これまで多くの同種の見学会や一般行事で問い合わせをしたことがあるが、「聞こえない方への配慮はとくにありません」「同行者の方が通訳を」「(沈黙)」、ひどいときは「来なくてもいい」と受け取られるような対応すらあったものだ。交渉の余地のない気まずい場面というのを、ずいぶん体験してきた。

今回も、ダメもとでいちおう伝えておくかなというくらいのつもりだった。直前の申し出にもかかわらず、あっけなくそういうことを言える準備のよさに脱帽。

私「なあ、手話のスタッフがいるって」
妻「マジで!? わーい、行くぞ」

そんな感じで、二人で出かけていった。

[つづく]


2007年12月23日 (日)

■車の窓を開けた営業マン

ちょっとした笑えるすれちがいネタをひとつ。

私たち夫婦が、ある会社の営業マンの車で送ってもらうことがあった。私は聴者、妻はろう者で、いつも手話で話している。営業マンは耳の聞こえる人、手話は知らない。

用事があって妻は先に車を降り、私だけもう少し先まで送ってもらうために車の中に残った。出発まぎわに私たち夫婦の間で、車の窓ガラス越しに手話でたあいのない会話をしていた。

「今日の晩ご飯どうする?」「またメールするわ」「OK、気をつけて」…

ここで、営業マンはどういう行動をとったか。なんと車の窓を細く開けたのである。これには笑った。

(お客様が別れぎわに話をしている、会話のさまたげにならないようにお手伝いを)

営業の気配りとして、そういうことをしたのだろう。でも、ガラスが何のさまたげにもなっていない手話会話にとって、この気配りは完全な「空振り」。

私は心の中でクスッと笑った。注意するほどの誤解でもないから、ほほえんで終わっておく。

当の営業マンはまったく気付いていなかったようで、会話が終わったらまた窓を閉め、何事もないように車を走らせていった。


2007年12月22日 (土)

■初めて語った自分の研究史

政策研究大学院大学の方から、インタビューのご依頼をいただいた。

「アフリカの森・研究者インタビュー」。アフリカを専門とする研究者たちに順に話を聞き、ウェブサイトに掲載していくというシリーズだ。専門の話だけでなく、どうしてアフリカに出会ったんですか?という背景なども含めて、個人的な思いをホンネで語る企画。

アフリカ通の大先生がずらりと並ぶ中、私のようなかけ出しの者が迷い込んでしまい、たいそう居心地が悪い。身を小さくしながら、それでもうれしくなって、あれこれと思いのたけを語りました。自分の研究史をまとまった形で紹介していただくのは今回が初めてで、そういう意味でもちょっと「おもはゆい」企画です。

アフリカに恩義を感じているいち研究者として、そして、アフリカへの正しい理解を広めていきたいと願ういち市民として、このような機会をいただいたことに感謝しています。ありがとうございました。

アフリカの森「研究者インタビュー 第13回 亀井伸孝氏」


2007年12月21日 (金)

■ミサイル防衛とサンタさん

北米航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command、略称NORAD)が、今年もクリスマスイブにサンタクロースの追跡をするという。

米加共同のミサイル監視システムで一晩中追いかけ回されるのだから、サンタもトナカイもたいへんです。

とはいっても、一晩で世界66億人の世帯を回るためには、1軒あたり1秒の20〜30万分の1のスピードで配達しないといけないそうで(NORAD試算)、それこそ人目を気にしている場合ではなさそうだ。

国防費を使って本気で遊ぶ人たちの心意気と、サンタやトナカイたちの無事の任務完了、そして朝起きた時の子どもたちの笑顔のために乾杯しましょう。

Merry Christmas!

NORAD TRACKS SANTA
(日本語版もあります)
(音楽あり、仕事中の閲覧はご注意を!)


2007年12月20日 (木)

■手帳のプレゼント

ある会社から、小さな封書が届いた。入っていたのは来年の手帳。顧客サービスということであるらしい。

うん、企業のロゴが入っていてなかなかかっこいいのだけれども、ざんねん、手帳はもう買ってしまって、スケジュールの引っ越しも済ませてしまったのです。

どうせくれるなら、12月の初め頃だとよかったんですけどね。などと、いただきものに注文をつけるワガママな客。


2007年12月19日 (水)

■社長の説教

新聞には「社説」という欄がある。いつも思うのですが、社説はえらそうですね。
「和平探れ」「対話に挑め」「毅然と対処せよ」
いつもだれかに命令しています。

主語がないのも気になるところ。

「歓迎したい」>だれが?
「危惧を覚える」>だれが?
「望みたい」>だから、いったいだれが?
みなさんご存じでしたか。「社説」とは「社長の説教」の略語なのです。

…というのは、私がいま思いついたまっ赤なウソですが、そうとも言いたくなるようなワンマンぶり。権力と闘うためには、そのくらいの心意気を持たないといけないのでしょうか。

おつかれさまです、社長!


2007年12月17日 (月)

■ピクトは楽し

ピクトグラム ピクトグラム(pictogram)。駅や公共の場所で見かける単色の絵記号のことである。有名なものとしては「車いすマーク」や「非常口おじさん」が知られているだろう。

とりわけ、走ったり転んだり感電したり迷惑行為をしたりする棒状の人間たち(ピクトさん)のバリエーションの豊かさについては、先行研究に詳しい(内海, 2007)。

さて。これまで見て楽しむだけだった私が、わけあって仕事でピクトグラムをいろいろと作成することがあった(図)。

おもしろいですねえ。頭、胴体、腕に脚。人体をいくつかのパーツに分けて作り、組み合わせていくとドラマができる。なんだ、人間てこんなものだったのか、と、プチ哲学してしまいそうです。

自由を標榜する私たち人間ですが、ことによるとみなピクトさんなのかもしれません。

(亀井作のピクトさんたちは、2008年に刊行される本に登場します)

参考文献
内海慶一. 2007.『ピクトさんの本』東京: ビー・エヌ・エヌ新社.


2007年12月16日 (日)

■お持ち帰りです

コンビニやファストフード店などの店員がつかう硬直した接客のことばが、「マニュアル敬語」などと批判されることがある。

さて、ある日の光景。

店「ドーナツはお持ち帰りでしょうか?」
客「はい、お持ち帰りです」

こらこら。店員だけでなく客の方もちゃんとしないと、と思った瞬間です。


2007年12月15日 (土)

■老後の楽しみ

30代半ばの私ですが、ある日ひょんなことから「老後はどんな暮らしをしたいか」という話でパートナーと盛り上がった。

妻「年老いたら、あれもこれもとワガママは言えないでしょう。ゆずれないことは何?」
私「机。たぶん40年後も、本を読んだり物を書いたりが好きなのは変わらないから」
妻「本の置き場所は?」
私「本棚ひとつ希望。じいさん本の買いすぎじゃ!と叱られたら、しかたないからスペースの上限を決めて時どき入れ替える」
妻「本代がかさむんとちがう?」
私「だったら公立図書館に毎日自転車で通う。安上がりでよろしい」

実は、今から心配していることがひとつある。私が認知症になったら、本を買ったことを忘れて、何度も同じ本を買ってしまうのではないかということだ。うん、われながらこれはやりかねないと思う。

その時に備えて、買った本のデータを付けておく習慣を身につけようかなあ。何とも気の早い老後への備えである。


2007年12月13日 (木)

■禁煙になります

喫茶店の貼り紙。
「店内は禁煙になります」
ふうん。いったいいつから? …というのはもちろんイヤミなつっこみだ。すでに禁煙のお店なのだから。どうしてこのお店は「禁煙です」と直言しないのだろう。

「冬になります」
「消費税が10%になります」
「バス路線が廃止になります」

「…になります」ということばには、自分の力ではどうにもならない逆らえない変化と、そのことへのあきらめの気持ちがこもっている。もちろん、相手にあきらめさせることも含めて。

禁煙をあなたに宣告しているのは私ではありませんよ、季節が移ろっていくように、私たちの知らないところで禁煙と決まってしまっているんです。そういう逃げを、この貼り紙は感じさせた。

こういうおもしろいことばは、日記のネタになります。ネタにしたのは私ではありません、私の知らないどこかのだれかのせいなんです、きっと。


2007年12月12日 (水)

■ネタも積もれば山となる: 祝!ジンルイ日記500件

ジンルイ日記500件 謹んでご報告申し上げます。今日のこの日記をもちまして、「ジンルイ日記」は500件目の掲載を達成しました(ネタ一覧)。

年内に到達するか?とひそかに指折り数えていましたが、最近はネタの思いつき頻度が高く、意外に早い達成となりました。なぜ思いつきが増えたんでしょう。通勤時間が長くなったことが関係しているかもしれません。

2003年11月2日掲載の第1回「■9条手ぬぐい」に始まり、今日までで4年1カ月11日(=1502日)。平均して3日に1回掲載していたことになります。あんがい書いていますね。

次の大台は1,000件。明日からまた同じペースで書いていくとすれば、2012年1月22日にその日を迎えることになる。

別に目標でも何でもありませんが、これからも思いつきしだい気ままに書いています。どうぞ末永くおつきあいのほど、よろしくお願い申し上げます。著者啓白。


2007年12月11日 (火)

■エンパワーは円パワー?

開発の分野でよく使われることば、「エンパワー(empower 力を付ける、権限を委譲する)」。

ところが、うちの愚PC(謙譲語)は、何とそれを「円パワー」などと変換したのである。

なに、エンパワーは円パワー? そんなわけないでしょう。エンパワーは当事者中心の開発実践においてこそ達成されるのであって、日本円の力でそれをしてあげましょうなどというおこがましい認識は、ただちに改めなければなりません。だれですか、そんなことを考えているのは!

きわどいところだけに、たかが誤変換に対して、躍起になって反論する私であった。


2007年12月10日 (月)

■夢の国際会議場

こんな国際会議場がひとつあったらな、と思う。
(1) 日本語-日本手話の通訳を、常時完備しています。
(2) 国際会議の時には、英語-アメリカ手話の通訳と連携し、日本語-英語-日本手話-アメリカ手話の「4言語同時通訳」をご用意します。
(3) 日本語または英語のパソコン通訳も、オプションでご用意できます。
(4) そのかわり、温泉も庭園も観光地も料亭も、何もありません。
ええ。これこそが「国際会議場」の名に値する会議サービスではありませんか。

学会参加のために地方を訪れると、必ず受付で渡されるのが、観光マップや名所旧跡の割引券。会議誘致と観光誘致をかねて、自治体が一生懸命その地方を売り込もうとする。

一方、毎年学会の会場が変わるたびに、ろう者の参加者が、手話通訳者の確保と経費捻出交渉のために必死になって駆け回るという現実がある。マジョリティは知らない、会議開催の裏側の苦労。

私は考える。手話通訳の態勢が完璧に整った会議場が全国にひとつでもあれば、毎年そこを学会で使ったらいいと思うのだ。観光がちゃらちゃら付いてくるよりも、会議の内実としてはその方がよっぽども重要である。

「うちの会議場は、手話通訳完備にかけては日本一です!」

そんな心意気を持った自治体がひとつ現れないかな。私は心待ちにしている。


2007年12月9日 (日)

■愚民を恐怖する選良のまなざし

『バイオハザード』という映画を見た。

舞台は近未来、地下の秘密研究所。ウィルス感染が拡大し、所員たちがみな「生ける屍」となってしまう。そこに潜入した人間たちが、大勢のゾンビ(もと人間たち)に襲いかかられながら任務を遂行する。

おもしろかったかどうか。うーん。もうしわけないけれど、私には感動も恐怖もなかった。映画の出来としては、ちょっとね…。

ただしひとつだけ、この映画が人類学的な好奇心に触れたところがある。

知能を失い、欲望のままにうごめくゾンビの群れを下に見やりながら、知性と個性をそなえた少数の人間たちが、自己を防衛しながら地下室を進む…。うん、「既視感」。どこかでこの光景を見たことがある。

そうだ、ニーチェが嫌った「畜群」、カンダタの蜘蛛の糸に群がった亡者たち、ウェルズが創造した地下人種モーロック。「愚かで劣ったマジョリティを忌避・恐怖する選良のまなざし」というのは、これまでもずいぶんと文学に描かれてきた。それはとりも直さず、この発想が人類の想像力の底流に常にあり続けてきたことの証であろう。この映画は、そういう思想の系譜に属している。

私はすかさず、「ゾンビの側の価値観を理解することも大事なんですよー」と、教科書的な文化相対主義を投げつけて映画をちゃかしてみたくなった。その一点において、この作品は日記にとどめておく価値があると思ったのだ。


2007年12月8日 (土)

■パートと内部告発

「パート職員が偽装を告発」「派遣社員、不正を語る」などなど。食品偽装事件の発端で、非正規雇用の人が口火を切ったことがしばしば記事になる。これをどう読みますか?
(1)[非忠誠説]パートや派遣は企業に対する忠誠心がないため、不用意に情報を流してしまう。

(2)[敵対説]パートや派遣は職場で冷遇されているので、会社に対する敵対心に基づいてあえて告発している。

(3)[能力説]非正規雇用の人は状況を見定めて職場を移る必要があるため、不正を発見する能力に長けている。

(4)[確率上昇説]全体的に非正規雇用の割合が増えているため、たまたま不正発見者になる確率が上がっているだけである。

(5)[バイアス説]「非正規雇用の正義のヒロイン/ヒーロー」というドラマを描きたいメディアが、そういう人たちをねらってネタを取る。

どれもありそうな話。真実はよく分かりません、事例が少なすぎるから。

悪い冗談をひとつ。経営者の人たちにこっそりとささやいてみるのはどうでしょう。「パートや派遣の人たちを正社員にして丸め込んだら、偽装をうまく隠せるかもしれませんよ…」。

それで就職や賃上げに成功したらしめたものではないか。もちろん、それで本当に「隠す側」に回ってしまうかどうかは、各人の良心によるでしょうけれど。


2007年12月7日 (金)

■研究会ミシュラン

世に、研究会というものが多い。

大きい方では学会や国際シンポ。小さい方ではセミナーにワークショップ。年間を通して星の数ほどある研究者の集まりを渡り歩きながら、発表したりされたり、コメントしたりされたり、飲んだり飲まれたりする。ああ、忙しい。

あまりに多いと、よい発表にめぐりあう効率も悪くなる。そこで、最近話題のレストランガイドブックにちなんで、研究会の格付けをしてみるというアイディアはどうだろう。

☆☆☆ そのために旅行する価値がある卓越した発表
☆☆  遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい発表
☆   そのカテゴリーで特におもしろい発表

フランスでトレーニングを受けた覆面調査員が、各会場をめぐって採点をする。評価のしかたをめぐって異論も出るし嫉妬も生まれるが、やっぱり三つ星となれば名誉なこと。有名になった研究会は、予約でいっぱいになる。

…なんてね。そのくらい刺激があったら、おもしろいことになるんじゃないかと思います。

ミシュラン(星の意味)


2007年12月6日 (木)

■手帳の引越し

2008年の新しい手帳を買った。

ある依頼原稿の折にいただいた、図書カードでの購入。つまり、執筆の成果で次の〆切を書き込む手帳を買っているのだから、これぞまさしく「自転車操業」である。

真っ白い手帳に、もう決まっている大きな予定を書き込んでいった。これで、2008年の骨格ができる。そこに細部の肉付けをしていくのは、来年の私。現実を生きることとは、荒削りのスケジュール帳を日々完成させていくことである。

「一年の計は暮れにあり」。来年の実りある一年を祈りながら、手帳の引越し作業を楽しみました。


2007年12月5日 (水)

■フィリップの贈り物 (5) 天国で手話講座

生前、フィリップは「死ぬのは怖くない、神様のもとに行くのだから」と言っていた。だからといって、なにも今すぐに行かなくたってよいではないか。

彼の見た天国は、手話に満ちあふれているだろうか。もっとも、彼の場合は波風の立たない平穏な世界よりも、少々問題があってそれを撃破していく生き方を好むだろう。その方が、活動家である彼らしい。

やつのことだ、きっと天国でさっそく手話講座を開いて、理解の足りない聴者たちに説教を始めているだろう。時には怒り、時にはほめながら、ベテランの手話通訳者を育成しているにちがいない。「そんな外来手話はろう者は使わない。外国の手話の本からではなく、私たち地元のろう者から学びなさい」などと言いながら。

地上に残された私は、彼からの贈り物である教訓と想い出と映像データを大切にしながら、もうしばらくこの世のさまざまな課題と格闘し続けようと思う。彼の残した宿題は、途方もなく大きいのだから。

さびしくなってしまった。もう少し一緒に仕事をしたかったけれどな。きっと彼は持ち場を変えて、「天国での手話普及」という大事な仕事を任されたのだ。そう思うと、共働関係がこれからも続くような心強い思いがする。

→ [おわり]


2007年12月4日 (火)

■フィリップの贈り物 (4) ワフォとともに

ワフォ・ンデタツィン(Wafo Ndetatsin)君。カメルーン人、男性、聴者。先日の日記で「W君」として紹介した、この国随一の有能な手話通訳者である。

あろうことか、今回の水難事故では、ワフォも同じ海でおぼれ死んだと知らされた。何てことだ…

2002年、フィリップたちのろう者のグループと仕事をしていたとき、初めてワフォにも会った。フィリップら、がんこなろう者講師チームが特訓した流暢な通訳者で、しかも通訳者倫理をわきまえており、「ろう者から学ぶ」という姿勢が徹底していた。もちろん、多くのろう者たちの信望を得ていた。

奨学金を得て渡米、ギャローデット大学で社会言語学と手話通訳を学び、修士号を取得。アメリカに居着いてしまうアフリカ人留学生も多い中、彼は帰国することを選び、カメルーンで初めての手話通訳者協会を設立した。博士号を取得する道を探っていた彼は、アカデミックな話題が好きで、私も本の情報のやり取りなどをしていた。

そんな矢先の、今回のできごとだ。仲のいいフィリップとワフォは、私たちを置き去りにして、二人連れの遠い旅路についてしまったのである。

[つづく]


2007年12月3日 (月)

■フィリップの贈り物 (3) 遺影となった手話映像

首都ヤウンデを擁する中部州で、彼はろう者社会の顔役となる。全国協会中部州支部の支部長として、ろう者サッカーチームの監督として、そしていくつかの手話講座の講師として。

手話についてがんこな見解をもつ彼は、撮影のモデルとしても適役だった。

「フランス語対応手話ではなく、あくまでろう者の自然な表現を」
「ろう者がふだんの暮らしで使っている単語を」
「ろう者どうしでのこういうシチュエーションを想定して」

私の細かい注文をすべてすみやかに理解して応じるだけでなく、「そうだ、こういう研究をしなければいけない」と、まるで指導教官のように私に提言をした。

こうして、今回の1カ月の調査で、彼とともに合計5時間29分28秒の手話映像を撮りためた。そのデータは、そのまま彼の遺影となってしまった。

[つづく]


2007年12月2日 (日)

■フィリップの贈り物 (2) 手話で遊ぶな、プロであれ

彼と初めて会ったのは、1997年、カメルーンの首都ヤウンデのNGOの事務所であった。スタッフとして、手話講師として活動する彼は、きっちりとネクタイを締めて現れた。Tシャツのラフなかっこうで訪れた私は、いささか後悔した。

カメルーンの聴者の教育者たちが、ろう者に相談もなくろう学校にフランス手話を導入したことを、常々たいへん憤っていた。

「ここには私たちろう者の手話があるというのに、聴者は何と勝手なことをするんだ!」

こうして、彼はアフリカのろう者自らがつくったとされるこの地の手話言語を擁護し、その手話を流暢に話せる手話通訳者の育成に取り組んだ。

忘れられないことばがある。ある会合での席上で、調査計画がうまく進まず時間を空費していた私に対し、彼の厳しいことばが飛んできた。

「手話で遊ぶな、プロであれ!」
(Ne jouez pas avec la langue des signes, il faut être professionnel !)

以来「手話で遊ぶな」は、私の調査倫理の核をなすことばとなっている。

[つづく]


2007年12月1日 (土)

■フィリップの贈り物 (1) 突然の訃報

「フィリップが水死した」…訃報は突然1通のメールでやってきた。

ンヴェ・フィリップ(Mve Philippe)君。カメルーン人、男性、ろう者。カメルーン全国ろう者協会中部州支部の支部長であり、この国が生んだ有能な手話講師の一人である。

11月24日の晩から、カメルーンの観光都市リンベで、ろう者団体による夜を徹してのパーティが開かれた。そこに招待された彼は、翌25日にほかの何人かとともに海に入り、そのまま行方不明となった。35歳の彼は、その海で死んだ。

ほんの2週間前まで、私は毎日彼と顔を突き合わせて一緒に仕事をしていた。そして、最終日の打ち上げのときには、今後長きにわたって共同研究を進めていこうと約束し、われわれの将来のために乾杯した。その最重要のパートナーの一人を、この水難事故で失ってしまった。

遠い日本で一人落胆しながら、彼との10年におよぶ付き合いを回想していた。

[つづく]


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