AACoRE > Laboratories > Kamei's Lab > Index in Japanese
ILCAA
亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2010年2月

日本語 / English / Français
最終更新: 2010年2月4日
[←前の日記へ][今月の日記へ] [テーマ別目次へ] [月別目次へ][次の日記へ→]

■『森の小さな〈ハンター〉たち』刊行を楽しみに (2010/02/04)
■序説で除雪 (2010/02/03)
■「視覚言語リテラシー」のシンポジウム (2010/02/02)
■岩波ジュニア新書への反響いろいろ (2010/02/01)


2010年2月4日 (木)

■『森の小さな〈ハンター〉たち』刊行を楽しみに

明日から、1カ月間、西アフリカのコートジボワールに調査に出かけます。

出発ギリギリまで、いろんな業務に忙殺されていまして。いやあ、今回の日本脱出計画はなかなかたいへんです。

出発までに、『森の小さな〈ハンター〉たち』という本の刊行の段取りをすべて済ませました。仕事を印刷関係の方がたにお預けして、出かけます。私の留守中に印刷され、刊行、広報、流通、発送などが始まる見込みです。

「朝、目が覚めたら立派な靴ができていた」という、あのグリム童話の靴屋さんを思い出す。

靴屋さんは、なにもさぼっていたわけではない。できるところまで努力して、ついに力つきたとき、小人たちが最後の仕上げを手伝ってくれたという話だ。怠けている人を助けてくれるような、都合のいい話ではない。「人事を尽くして天命を待つ」、靴屋の話はそういう教えである。

うん、やるところまでやりましたよ。後は、各位におまかせしていきたいと思います。帰国後に、完成本を手に取ることを楽しみに。


2010年2月3日 (水)

■序説で除雪

「○○学序説」

本や論文のタイトルなどでよく使われることば。さて、今日の誤変換は、

「○○学除雪」

…おいおい、学問の「雪かき」をしてどうすんねん。

おりしも関東に寒波が訪れて、窓の外に粉雪が舞っている今日このごろ。タイミングがよすぎるではないか。

それとも、あれかな。学問のいろんな知識や言説が、古典から現代まで積もり積もっていて、もううんざりということかな。身動きが取れないから、えいやっと雪かきをして新しい道をひらいてしまおうという、そういう意気込みか。それはそれでいいかもしれないね。

積もり過ぎた雪を大事に集めて固め、かまくらを作って中に引きこもるのもけっこうだけれど。私は、積もり積もった知識や言説を足がかりにしながらも、右へ左へとかきわけて、前に進む方が好みなので。

おっと。たかが誤変換ひとつで、想像がいろいろとふくらんでしまいました。(笑)

[類似ネタ]
■知識が重たすぎるヨーロッパ (2009/07/16)


2010年2月2日 (火)

■「視覚言語リテラシー」のシンポジウム

かつてこんな行事があったことを、最近、ツイッター経由で知った。

日本生物地理学会第62回年次大会シンポジウム
「進化と系譜:ツリー,ネットワーク,視覚言語リテラシー」
オーガナイザー・司会:三中信宏(農業環境技術研究所/東京大学大学院農学生命科学研究科)
日時:2006年4月8日(日)13:00~15:30
場所:立教大学・池袋キャンパス(7号館1階7101教室)

企画者は『系統樹思考の世界』(拙評はこちら)著者の三中信宏さん。おお、しかも、旧知の動物行動学者・絵はがき研究者である細馬宏通さん(滋賀県立大)も登壇しているではないか。

ここでいう「視覚言語」とは、せまい意味での視覚的自然言語(ろう者の手話など)を指すのではない。人類が発明した視覚的な表現形式、とくに、文字以外のもろもろをあつかっている。それにしてもすごいですね、系統樹やネットワークから絵はがきまで、まさに「文字以外のすべてを詰め込む」という気宇壮大な企画。しかも、生物地理学会の年次大会でやってしまう勢いのよさである。学問は、こうありたいですね。

私自身、視覚的な表現形式のリテラシーについては、けっこうあれこれと考えてきた。もともと、生物学スケッチで猛特訓を受けた経歴をもっていて、フィールドワークでは必ず絵を描いてきたし、その経験にもとづいて「人文・社会科学の教育のなかでスケッチをきちんと教えよう!」と提唱する論文を書いたこともある(拙著近刊の一章「フィールドで絵を描こう: 人文・社会科学におけるスケッチ・リテラシー」、ぜひご覧ください)。そこには、「ことばがことばを生み続ける」という無限の循環をやっていて人びとに飽きられてしまうような、退屈な人文・社会科学はもうごめんです、という意図を込めている。

共同研究で編集した論文集で、ピクトグラムを自作して全編に配置したこともあるし、実際、ピクトグラムは科学の記述形式として、かなりいけてるのではとも思っている。いちど、ピクトグラムだけで民族誌を1冊書き上げて(描き上げて)みたいという妄想すらもっている。

話題変わって。新刊『集団: 人類社会の進化』(河合香吏編, 京都大学学術出版会, 2009)を手に取った。「ヒトはなぜ集まるのか」、霊長類学者、文化人類学者らが集まって論じた難解な学術書だが、この本のすごみは、各論文の冒頭に「概念図」なる奇妙なひとこまマンガが必ず配置されていることである。

各論者が思い描いている頭の中の「集団」イメージが、まさに具象的な絵になってページにあふれているのだ。十人十色の「集団をめぐる思想」を、絵本のごとく開陳して並べてしまったこの本は、実に衝撃的。どこかでマネしてやろう、と思わずにはいられない。

「視覚言語リテラシー」をめぐる話題、今後も要注意です。先人たちの野心ある企画を励みとして、私もいろいろやってみようかな。

【関連ページ】
ピクトたち、学会で大いに踊る (2008/06/05)
ピクトは楽し (2007/12/17)
『森の小さな〈ハンター〉たち: 狩猟採集民の子どもの民族誌』(2010年刊行予定, 印刷中)
『アクション別フィールドワーク入門』(2008年刊行)
書評『系統樹思考の世界: すべてはツリーとともに』(2008/04/25)


2010年2月1日 (月)

■岩波ジュニア新書への反響いろいろ

拙著岩波ジュニア新書『手話の世界を訪ねよう』の反響が、いろいろ届いています。そのうちのいくつかをまとめてご紹介。

■いくお〜る
雑誌『いくお〜る』89 (2010年2月号) に、新書著者としてのロングインタビューを掲載いただいた。テーマは「異文化理解と手話学習」。この2月号を最後にこの雑誌は休刊し、以後はウェブ版に移行するという。休刊前の最終号に、10ページもの紙幅を費やして掲載いただいたことに、感謝しています。

亀井伸孝. 2010.「インタビュー: 異文化理解と手話学習」(インタビュア: 松田一志)『いくお〜る』(ベターコミュニケーション研究会) 89 (2010/02): 16-25.
『いくお〜る』89 (2010年2月号)

■日本財団会長のブログ
日本財団の会長である笹川陽平氏のブログで、拙著ジュニア新書を紹介いただいた。日本財団は、日本と近隣アジア諸国におけるろう者の高等教育や手話言語学研究の振興のために、多くの事業を積極的に進めている。その財団で、事業の参考資料としてご活用いただいたとすれば幸いです。

日本財団会長笹川陽平ブログ「聾者(ろう者)と手話」その3 [2010年01月29日 (金)]

■埼玉県入間市の作文コンクール
埼玉県の「入間市教育委員会作文コンクール」で、上藤沢中学校3年の山下千里君が、拙著の読書感想文「手話の世界を知って」で、堂々の入賞を果たしました。おめでとう! 中学生の読書感想文に取り上げていただけるというのは、まさにジュニア新書を書いた著者の願いそのものです。著者も一緒に入賞したような、おめでたい気分になっています。

山下千里. 2009.「手話の世界を知って」入間市教育研究会国語部編『茶の花 (中学)』(入間市教育委員会) 63 (2009.12): 105-107.

■お茶の水女子大附属高校のみなさんから
拙著がお茶の水女子大学附属高等学校の授業の課題図書となり、生徒さんたちが感想文を多数お寄せくださった。まことにありがとうございます。著者が書いた本について読者が感想文を書き、その感想文を著者が読む。そういう相互の交流になって、ジュニア新書を書いてよかった!と思える体験となりました。みなさん、せっかくだから身近なろう者の方に会って、手話の世界を訪ねてみようね!



矢印このページのトップへ    亀井伸孝日本語の目次へ

All Rights Reserved. (C) 2003-2013 KAMEI Nobutaka
このウェブサイトの著作権は亀井伸孝に属します。