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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2010年7月

日本語 / English / Français
最終更新: 2010年7月26日
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■アフリカに避暑に行こう (2010/07/26)
■iPad には類人猿がよく似合う (2010/07/25)
■いつか役に立つかもしれない可能性がないとは言い切れない学問 (2010/07/21)
■ヨーロッパいいですね、アフリカ大変ですね (2010/07/18)
■「ひとりオープンキャンパス」の想い出 (2010/07/10)
■雨にぬれた選挙ポスター (2010/07/03)
■毎週9コマ授業の期間に突入 (2010/07/01)


2010年7月26日 (月)

■アフリカに避暑に行こう

在京の、あるアフリカ出身の大使館職員と、だらだら会話(原文はフランス語)。

職「はぁ、暑いねえ…」
私「ええ、暑いですね。あなたの国みたいに」
職「そんなことはない、東京ほど暑いわけがないだろう」
私「ほんとに?」
職「そりゃそうだ。東京の方が暑いに決まっている」

アフリカ出身の人が音を上げる、日本の猛暑。暑さに苦しむ日本のみなさん、このさい、アフリカに避暑に行くのはいかがでしょうか。


2010年7月25日 (日)

■iPad には類人猿がよく似合う

Apple の iPad が売れています。私はまだ手に入れていないけれど。片手で持った時のあの微妙な重さに、どうしようかなあと熟慮中。

iPad には類人猿がよく似合う。私は、そう思います。

最初に見た時から、人差し指でペタペタと触って操作するあの感じが、コンピュータ画面を使ったチンパンジーの心理実験の光景とそっくりだと思っていた。もとより、あの石板状の物体には、『2001年宇宙の旅』のモノリスの影が映り込んでいるようにも見える。まあ、これは考えすぎかな。

ともあれ、人類は「興味あるものをのぞき込み、指を伸ばして触る」という、数百万年以上も変わっていない行動傾向に適した、新しい道具を手に入れたことになる。少々知恵が付いたところで、人類のすることは本当に変わらない(もっとも、知恵もたいして付いていないかもしれない)。

手頃なもてあそびやすい板なので、iPad はいろいろな使い方があるという。ある人はそれで手品を披露し、ある人は「iDish」と称して寿司やプリンを盛りつけているという。裁判所から「勝訴」や「不当判決」などの文字とともに駆け出すときにも便利だという。

私のアイディアをひとつ。「大相撲の懸賞幕に iPad を使う」のはどうだろう。iPad を掲げて土俵をぐるぐるとめぐり、企業広告が動画で映し出される。野球賭博問題で揺れる大相撲も、これでイメージチェンジまちがいなし!

昨日、定期検査に来た大阪ガスの関連会社の社員が、重たいノートPCをかついで、夏の猛暑の中をふうふう言いながら仕事をしていた。大阪ガスの経営陣のみなさん、せめて、営業担当の社員には iPad を配るのはどうでしょうか。

汎用性のありそうな、小ぶりの板。あれこれ遊べそうです(やっぱり買おうかな)。


2010年7月21日 (水)

■いつか役に立つかもしれない可能性がないとは言い切れない学問

「『先生の○○学は、何の役に立つんですか?』って、学生に聞かれるんですよね」

ある研究者の集まりでの、グチ大会。少数言語や少数文化、とくに遠い海外のことについて調査している研究者たちは、私も含めて、こういうストレートな質問に時どきさらされる。

「だいいち、私らの学問なんて役に立つわけないでしょ。最近、そういう見方ばっかり…」

そうこぼす同業者たち。ええ、それは一理ある。「すぐに役に立たなければ学問じゃない」というような乱暴な風潮は、私も大嫌い。でも、グチばっかり言っているのも、私の性に合わない。

「そのうち分かるけど、実はね、将来必ず役に立つんやで(ニヤリ)」

こんなふうに、余裕をかまして学生をひき付けるくらいの心がまえをもっていたいですね。

学「どんな役に立つんですか?」
私「お楽しみ。今は君も気付いていないかもしれないけどね。ふふふ…」

私だって、「700万年前に人類が二足歩行を始めた」など、すぐに役に立ちようもない知識を一生懸命紹介していて、実際おもしろがっている学生たちがいる。おもしろさをどう役立てるかは、本人次第でしょう。そのうち、とてつもないSF大作マンガを書いてくれる人が出てくるかもしれないし。

いつか役に立つかもしれない可能性がないとは言い切れない学問、くらい遠回りでもいいから。「役に立たない」と開き直らずに、役立つことをほのめかし続けるのはいかが? きっと、研究費の獲得のコツも、そういう発想の延長線上にあるのではと思います。


2010年7月18日 (日)

■ヨーロッパいいですね、アフリカ大変ですね

ヨーロッパを調査地とするフィールドワーカーと話をしていた時のこと。その方は、ヨーロッパを専門にしていて「ひとつ嫌なことがある」と私にこぼした。

調査から戻ると、日本の大学の同僚たちに、

「へえ、ヨーロッパですか。いいですねえ」「楽しかった?」

などと言われて、そのたびに不快になるという。こっちは仕事で調査に行っているのに、いつもバカンスのように思われてしまう。嫌みのようだ、と感じるそうである。

ふーん、そうか。自分の場合を考えてみる。私はアフリカに何度も行っているけれど、職場の同僚に同じように言われたことがない。

「アフリカですか、大変ですね」「暑かった?」「無事でしたか?」「大丈夫?」「ライオンはいた?」

いったい、何が大変で大丈夫でライオンなのかよく分からないが、つまり「アフリカは苛酷であるに違いない」という思い込みである。エアコンのよく効いた都市部のホテルで、冷たいビールを飲みながら無線LANでインターネットしてました、なんて説明するのもめんどうだから、適当にやり過ごすことも多いけれど。

そんな日本風のバイアスのおかげで、私は、調査をうらやましがられるまなざしを浴びることを免除されているらしい。それはそれで、奇妙な話である。

「アフリカが快適で、ヨーロッパが苛酷」であってはいけないらしい。うーん、やっぱり変だなあ。


2010年7月10日 (土)

■「ひとりオープンキャンパス」の想い出

夏です。大学は、オープンキャンパス真っ盛り。

来年の入学をめざす受験生たちが大学を見物し、模擬授業を受け、説明を聞いて、大学の品定めをする。いい時代ですねえ。少子化のためにお客さんを確保したい大学が、受験生たちの気を引こうと一生懸命お世話するのである。

#ちなみに、耳が聞こえない、目が見えない、車いす使用の、そのほかの事情をもつ受験生たちは、どうしているのかな。まさかこの時代、門前払いなど通用しないと思うが、見学の時の門戸はきちんと開かれているだろうか。
さて、私が大学進学を目指していた頃は、こんなちやほやサービスは存在しなかった。むしろ、18歳人口が多すぎて、受験生が余っていた。放っておいても学生は勝手に集まるから、大学も、来たいなら来れば?みたいな感じ。大らかな放任主義の時代である。

私は、志望する大学のしぼり込みについて考え込んでいた。インターネットもホームページもメルマガもツイッターも存在しない時代。本や情報誌を読んだって、よく分からない。それなら、いっそのこと自分で見に行ってやれ。

そこで、高校の授業をさぼって、大学をふたつ見に行った。たしかそれぞれ3日間ずつの計画を立てて、勝手に見学したのである。それも、大学祭などの特別な時に行っても意味がないので、大学の通常授業にもぐりこみ、学部生たちといっしょに授業を受けて回った。授業が終わった後は、その教員をつかまえてアポなしインタビュー。時には研究室まで押しかけて、自分の関心を話し、大学の実態を尋ね、どんな選択肢があるかを聞き出した。

そりゃあ、度胸が要りましたよ。でも、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」、ここで尻込みして帰ったらわざわざ来た意味がないと、自分をけしかけて調査して回ったのだ。われながら、ずいぶんと活動的だったなあ(笑)。当時はフィールドワークを本職にする気は全然なかったけれど、今も似たようなことをしていると言えなくもない。

ふたつの大学について、あれこれと気付くこともあったが、忘れられない一言がある。

「学問に楽な抜け道はない。どんな進路を選ぶにせよ、きちんと勉強しておきなさい」

そう言ったのは、高名な物理学者である佐藤文隆氏である。よく、飛び込みの生意気な高校生の相手をしてくれたものだと、感謝とともに懐かしく思い出す。

結局、そのうちの一方の大学を受け、そこでお世話になることになった。1回生としてあらためて授業を受けに行ったとき、何人かの教員が「おお、あの時の君か。しっかりやれよ(笑)」などと覚えていてくれたことにも、驚いた。大学とはどういう場なのかをもっとも鮮明に体験することができた、貴重な数日間の「ひとりオープンキャンパス」だった。

さて、今年は私がオープンキャンパス担当教員として、受験生たちを迎える側になる。時代も世代も環境も違うけれど、それぞれなりの大学への希望を抱いて、見学者たちがやってくる。さて、私は、受験生たちの心に残るようなことばとともに、ひとりひとりを励ますことができるだろうか。


2010年7月3日 (土)

■雨にぬれた選挙ポスター

参議院選挙たけなわ。梅雨空の下、方々へと駆け回っている候補者も支援者も、どうもおつかれさまです。

街角に立つ掲示板のポスターも、雨でびしょぬれ。傘をさしながら、雨滴のついた候補者のポスターをひとつずつ眺める。

そこで、ひとつおもしろい遊びを思いついた。各候補者の顔についた雨滴を眺めていると、汗や涙のようにも見えてくる。いろんな事情とあわせて見ていると、おもしろいストーリーが浮かぶのだ。

「与党なのに、冷や汗かいてるな」
「万年野党だけど、ひたいに汗してがんばってる」
「あ、この人、もう泣いてるわ(笑)」

表情との組み合わせもおもしろい。「笑顔に涙」だと、感涙にむせび泣いている感じだし、「決意の顔のひたいに油汗」だと、ライバルに追いつめられたギリギリ感が出ている。

ポスターに落書きをすることは違法行為なので、ぜったいにやってはいけない。でも、たまたまポスターに付いた雨滴を見て楽しむのは、けっこうおもしろいですよ。みなさんも、お試しあれ。

[20100714付記]
この時に泣いていた候補は、落選しました(現職閣僚でありながら)。そうか、結果と突き合わせると、いっそうおもしろいかもしれません。


2010年7月1日 (木)

■毎週9コマ授業の期間に突入

今週から3週間、毎週9コマの授業をもつ期間に突入します。

通常講義が5つに、セミナーが3つ。それに加えて、オムニバス講義の当番がひとつ回ってきた。合計9コマの異なる授業を担当することになる。おそらく、これまでの人生でもっとも教育ばかりやっている期間になるので、記念にここに記します。

もっとも、そんなの生ぬるい、とおっしゃる方もいるでしょうね。「私、毎週16コマやっていましたよ」と平然とおっしゃる先生もいて、その力量には敬服するばかり。不器用な私は、9種類の授業を準備するだけで、へとへとです。

もちろん、仕事だから黙々とこなしましょう。ただ、その分、いくつかの共同研究に注げる時間が足りなくなっています。そのへんについては、しばし目をつぶってくださいまし。>共同研究者や出版社のみなさま

これがぶじ過ぎたら、調査と執筆に時間を注ぐことができる夏休みがやってきます。



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