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発表要旨
最終更新: 2007年9月10日

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関学COEワークショップ「多文化と幸せ」
2007年9月30日

「それは『調査』か、と言われると: 大学やNPO・NGOが『研究』について考えさせてくれたこと」
内海 博文(関西学院大学社会学研究科COE)

#語るに足る「調査」実績が私にはまだない、と思う。WS(作業場)らしく、その私の研究プロセス自体をネタにして、参加者の方々と意見交換をしたい。

キーワード:社会学、研究者、調査、映像、社会


■発表の要旨
報告者の専門は社会学である。よってその研究対象は「社会」だと考えている。しかし「社会」に関するいわゆる調査らしい調査──統計的手法であれフィールドワーク的な手法であれ──をしたことはない。「社会」に関する机上の空論──社会学的な学説研究や理論的研究──をもっぱら領分としてきたし、今後もそうであろうと思っている。

と同時にこの数年、大阪で活動するアート系のNPO(NPOrecip、NPOremo)やひきこもり支援のNPO(ニュースタート関西、スローワーク協会)、アフリカでHIVを中心とした国際医療支援を行うNGO(アフリカ友の会)などに、それぞれの団体のご好意もあって、何らかのかたちで関与する機会を与えてもらってきた。またそれと平行して、法人化後の大学では、大学院GPやCOEの助手や研究員として勤務させてもらってきた。

もちろんこうした経験は、(NPOやNGOの活動に実際に関与している人々の日々の経験や、現在の大学の変化を中心的に担っている方々の経験からすれば)ごくごく断片的なものにすぎない。各団体の活動に対して何かしら直接的な形で貢献できるだけの能力を報告者は持っていないし、ましてや、それぞれの活動に関していわゆる調査としての立場から語れるだけのものを、報告者は持っていない。

とはいえ、それらは「社会」に関する報告者の関心のあり方に、少なからぬ影響を与えてくれている。とくに、それぞれ異なる局面でのさまざまな動きが、現代における「社会」の変化を示唆しているのではないかと考え始めている。社会学的な研究において想定されてきた従来までの「社会」を「ナショナル・ソサイエティ」と呼ぶならば、現代のそれは、「ポスト・ナショナル・ソサイエティ」として概括できるように思われる。すなわち、「国民」というものに付与されてきた「社会」としての特権的な地位が少なからず失われつつあり、諸個人が互いの生存のためにその維持や創出を試みている「諸社会」が、グローバルなレベルやよりローカルなレベルで目につき始めている、という認識がそれである。

「ポスト・ナショナル・ソサイエティ」に関する研究は、「ナショナル・ソサイエティ」に関する研究とどう異なるのか。これが今回の報告の焦点である。それぞれ調査の経験を豊富に持っているであろう、WSの参加者の方々とのやり取りから、この点について考える機会が持てれば、と思っている。


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