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発表要旨
最終更新: 2007年9月26日

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関学COEワークショップ「多文化と幸せ」
2007年9月30日

「専門知がせめぎ合うフィールド: <被開発者の幸せ>を求めて」
内藤 順子(日本女子大学; 日本学術振興会)

#諸専門家がせめぎあう開発援助の現場。一専門家として巻き込まれつつ、主役が置き去りにされがちな援助構造について、多角的に考える。

キーワード:専門知、社会的リハビリテーション、複数の文脈を生きる個人、開発援助


■発表の要旨
国際開発援助の現場とは、国を違える異文化間における活動であるうえ、異なる職業文化をもつ専門家たちが居合わせ、それも立場や地位がちがう階級文化までがそろった、いわば複合的異文化錯綜の場である。開発や福祉は、そもそも被開発者が幸福であれることをめざす。よりよいありかた(Well-being)を求めて、専門家たちがそれぞれの専門知を駆使して一丸となるはずのフィールドだ。

しかし現実は、専門家同士の対立や、被開発者に‘描いてあげるしあわせ’の誤認が頻発している。「被開発者視点の導入」をしてみたつもりでも、援助が被開発者にまで届かない。現場にかかわるすべての人間が善意を持ってやっているはずの活動なのに、なぜ?

昨今の開発援助論では、専門家(研究者)や実務家がどう実践的に役立つかということを考えているようだが、どう役にたっていないのかを考えたほうがよい。専門家になるということは、ある特殊な知識なり領域に長けることであり、思考方法を得て語彙を伸ばしたりすることである。それが求められる良いことであり、被開発者にも幸せをもたらす存在となれるかに見える。それが罠なのだ。専門性が優位性へとスライドし、優位な立場から被開発者の幸せを描いてあげることこそが、じつは被開発者を幸せとは遠い地平へと追い込んでしまう構造を作り上げている。

たまたま開発援助の現場で焦点化した、この人の幸せを描く活動をめぐる問題について、チリにおける具体的事例に即しつつ、より広く考えてみたい。


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