2008年3月17日
「特別対談・編集というフィールド」
ゲスト: 望月 幸治(世界思想社編集部;『アクション別フィールドワーク入門』担当)
聞き手: 飯嶋 秀治(九州大学; 関西学院大学COE研究協力者)
#『アクション別フィールドワーク入門』を例に、学術書づくりのプロセスを、編集現場での秘話を交えて語る。著者/編者の立場から編集者の本音に鋭く迫る。キーワード:フィールドワーク、編集、本づくり、市場、締切
■発表の要旨
『アクション別フィールドワーク入門』(以下、本書)は、企画から9カ月というスピードで出版された。これが実現したのは、編者に明確なコンセプトがあったこともさることながら、出版を引き受けていただいた世界思想社の編集担当、望月幸治氏の力に預かるところが大きかった。■参考文献望月氏は本書の執筆者たちとほぼ同世代であるが、学生時代には、エチオピアのフィールドワーカーでもあった。いわばフィールドワークの手の内を知り尽くしている編集者である。そこで、フィールドの編集とホームへの翻訳をおこなう研究者の諸論考を、さらに編集して市場への翻訳をおこなう「編集というフィールド」について、本書の企画から販売に至るまでの一連の流れ(企画、原稿、校正、装丁、印刷・製本、広告・宣伝、配本・販売)の中で伺った。
(以上、飯嶋秀治[聞き手])企画判断の基準として、「価値・意味・インパクト」「採算・売れ行き」「実現性」という3つを頂点とする「企画の三角形」が紹介された(オリジナルは鷲尾2004)。
本書の企画に関しては、次の点が、正式に企画を通す際のポイントとなったことが指摘された。
1.「アクション別」というきわめてユニークな視点をもっており、かつ若手で気鋭の執筆陣がそろっていることで、計り知れない「価値・意味・インパクト」をもっていること。
2. ひとつの地域や限定されたテーマの本ではなく、フィールドワークの入門書であるため、読者対象が広く、「採算・売れ行き」が見込めること。
市場を意識した編集者の目で原稿内容をチェックする際のポイントとして、次の点が提示された。「書き出しはうまくいっているか。読者をその世界にひっぱれるか」「エピソードなどが適度に混じり、読者は退屈しないか」「著者の肉声、素顔が行間からのぞくか」。
本書の場合は、すべての節の冒頭が、セリフや語りを用いた印象的なエピソードからはじまっており、多くは著者自身がまきこまれた話であるため、すべてのポイントが満たされていることが説明された。この長所を活かすために、レイアウト上も工夫をほどこしたことが示された。
(以上、望月幸治[ゲスト])*なお、対談の中では、本書出版経過に至るまでに、組版や装丁にどのようなオルタナティヴがあったのか、という具体的な資料提示があったが、ここでは割愛した。
松田哲夫(イラストレーション内澤旬子). 2002.『印刷に恋して』東京: 晶文社.■参考サイト
鷲尾賢也. 2004.『編集とはどのような仕事なのか: 企画発想から人間交際まで』東京: トランスビュー.
『アクション別フィールドワーク入門』(世界思想社)
■質疑応答の要旨(●参加者/○発表者)
●「締切が守れないとき、著者は次の3つのうちどのようにするのがよいのか?
1.沈黙を守る。
2.『途中ですが……』と書きかけの原稿を送った上で原稿の修正を続ける。
3.『○日後に送ります』と提出予定日を連絡する」○「3です。ただし、『3年後に送ります』などあまりに先延ばしだと困りますが……」
このページのトップへ
このウェブサイトの著作権は学校法人関西学院に属します。