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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

言語研修「フランス語圏アフリカ手話 (LSAF)」

日本語 / English / Français
最終更新: 2008年11月13日

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で開催された、2008年度言語研修「フランス語圏アフリカ手話 (LSAF)」についてご紹介します。

・このページは、大学による公式の広報を補足するものとして、本言語研修主任講師である亀井伸孝が開設しました。したがって、このページの記載事項の文責は亀井個人にあります。
・申込みなどの手続き詳細については、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の言語研修公式ページをご覧ください。

※10人の受講生全員に修了証を授与し、閉講しました (2008年9月5日)
※週末日記最終回を掲載しました (2008年9月6日)
The Daily Yomiuri の紙面で紹介されました (2008年9月11日)
※毎日新聞ユニバーサロンで紹介されました (2008年10月10日)

■フランス語圏アフリカ手話とは?
■言語名について
■手話言語研修・週末日記
■終了報告 (1) 言語研修「フランス語圏アフリカ手話」最終報告書 (New!)
■終了報告 (2) データで見る言語研修「フランス語圏アフリカ手話」 (New!)
■資料 (ダウンロードできます)
■教材と授業の進め方
■教科書の概要
■DVDの概要
■開催の概要
■文化講演シリーズ「アフリカの手話の世界」
■公開講演会「ケニアのろう者コミュニティ」(8/22)
■よくあるご質問
■報道 (New!)
■東京外国語大学プレスリリース
■参考文献
■関連日記(ジンルイ日記から) (New!)


■フランス語圏アフリカ手話とは?

「フランス語圏アフリカ手話」は、西・中部アフリカのフランス語圏の国ぐにのろう者たちの間で広く話されている手話言語です。

西・中部アフリカでは、1950年代からろう教育事業を通じてアメリカ手話が伝播し始めましたが、それはやがて各地で変容し、英語圏諸国ではガーナ手話やナイジェリア手話を生みました。一方、1970年代からろう教育が普及し始めたフランス語圏諸国では、アメリカ手話に音声フランス語の特徴が加わった新しい手話言語が生まれ、ろう者たちによる教育事業の中で普及し、今日ではこの広い地域のろう者たちの間で日常的に用いられています。本研修で取り上げる「フランス語圏アフリカ手話」とは、このアメリカ手話と音声フランス語の言語接触の中で成立した、アフリカ生まれの比較的新しい手話言語です。

このような経緯から、フランス語圏アフリカ手話は、アメリカ手話との間に多くの共通語彙をもっています。一方で、フランス語の口型(口の形や動き)、つづり、語順を取り入れるなど、アメリカ手話には見られない特徴もさまざまにそなえています。また、食文化関連の語彙など、アフリカ固有の手話単語が数多く含まれていることも特徴のひとつです。


■言語名について

アメリカ手話と音声フランス語の言語接触の中で生まれたこの手話言語については、これまで「アメリカ手話」(Ethnologue)、「アメリカ手話をフランス語の語順で話している」(Lane et al. 1996)などと断片的に記されてきましたが、固有名が与えられていませんでした。

西アフリカのベナン共和国でろう者たちが編集した手話辞典が、この言語に関する唯一のまとまった文献です。そこでは「フランス語圏アフリカのろう者の手話(langage des signes du sourd Africain Francophone)」と呼ばれています(Tamomo 1994)。これは確かに正確な呼び方ですが、固有の言語名として用いるには長過ぎるのが難点です。

この言語研修に先立つ調査の中で、現地のろう者たちとも協議の上、「フランス語圏アフリカ手話(Langue des Signes d'Afrique Francophone [LSAF])」という言語名を提唱することとしました。この手話言語の普及と確立に尽力したアフリカのろう者牧師 Tamomo らの精神を受け継いだ名称として、本研修ではこの言語名を用いています。

なお、この言語は西・中部アフリカ諸国に広く分布し、各地のろう者たちの間で話されていますが、当然その中には地域による違い(方言)が見られます。本研修で学ぶのは「その中のカメルーン方言である」ということを念頭に置いてください。

また、アルジェリア、ジブチ、マダガスカルなど、フランス語が話されていてもこの手話言語が話されていないと考えられる地域もあります。この手話の分布が、音声フランス語の分布と完全に一致しているわけではないことにもご留意ください。


■手話言語研修・週末日記

言語研修「フランス語圏アフリカ手話」の進行状況の報告を、毎週土曜日に掲載しました。受講生と講師の奮闘ぶりをご覧ください。

■手話言語研修・週末日記 (1) この多様な受講生たち (2008/08/09)

□この多様な受講生たち!
□2008/08/04月: 第1課 あいさつ
□2008/08/05火: 第2課 指文字
□2008/08/06水: 第3課 S+V, S+A
□2008/08/07木: 第4課 …がある/…ない
□2008/08/08金: 小テスト/文化講演「北アフリカのろう者」
□受講生たちのノリのよさ
□ほかの手話言語既習者の弱点
□講師の役割分担
□来週は

■手話言語研修・週末日記 (2) 夏期休校中の強行軍 (2008/08/16)

□夏期休校中の強行軍
□2008/08/11月: 第5課 S+V+COD
□2008/08/12火: 第6課 否定文いろいろ/新聞取材
□2008/08/13水: 第7課 命令文、だれ
□2008/08/14木: 国名と人名の復習/DVD懇談会
□2008/08/15金: 小テスト/文化講演「東アフリカのろうコミュニティ」
□手話での質問者急増!
□隣は何をする人ぞ
□東府中でアフリカの手話
□来週は
■手話言語研修・週末日記 (3) 折り返し地点をすぎて (2008/08/23)
□折り返し地点をすぎて
□2008/08/18月: 第8課 何/第9課 どこ、どのように
□2008/08/19火: 第10課 いつ
□2008/08/20水: 第11課 なぜ、何時
□2008/08/21木: 第12課 いくら、いくつ、何歳
□2008/08/22金: 小テスト/文化講演「ケニアのろう者コミュニティ」
□DVDと教科書の効用
□放課後の風景
□課外の手話実践
□来週は
■手話言語研修・週末日記 (4) 急増するリクエスト (2008/08/30)
□急増するリクエスト
□2008/08/25月: 第13課 時制
□2008/08/26火: 第14課 動詞
□2008/08/27水: 第15課 S+V+COD+COI
□2008/08/28木: 第16課 S+V+COD+A、どちら、比較級
□2008/08/29金: 小テスト/文化講演「ザンビアの聴覚障害児者」
□奇妙な組み合わせの対応手話
□せっせと授業の記録とり
□アフリカに行きたい!
□来週は
■手話言語研修・週末日記 (5) 終わりよければすべてよし (2008/09/06)
□ある言語的マイノリティ
□2008/09/01月: 第17課 副詞、CL
□2008/09/02火: 第18課 関係代名詞/文化講演「西・中部アフリカろう文化紀行」
□2008/09/03水: 第19課 節/新聞の取材
□2008/09/04木: 第20課 話法
□2008/09/05金: 最終テスト/文化講演「わが国カメルーン」/卒業制作発表会
□「手話を話せる国際人たれ」
□閉講式で見たふたつの文化集団
□池袋でンドレを食べる
□総合格闘技としての言語研修
□来たるべき手話言語研修のために
□終わりよければすべてよし


■終了報告 (1) 言語研修「フランス語圏アフリカ手話」最終報告書

フランス語圏アフリカ手話研修報告
2008年10月29日
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研修専門委員会承認
亀井伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

0. はじめに: 新しい試み

本研修では、AA研の言語研修として初めて手話言語を取り上げることとなった。手話の学習に適した映像教材を準備すること、ろう者の講師を複数招聘すること、ろう者の受講生を受け入れること、手話通訳者を手配することなど、いくつもの新しい課題に取り組んだ。各位のご協力により本研修が円滑に行われたことに感謝するとともに、手話関連事業の一事例として今後の参考になればと願っている。

1. 期間と時間

フランス語圏アフリカ手話(以下、LSAFと表記)の研修は、2008年8月4日〜同9月5日の土日を除く毎日、25日間にわたって行われた。毎日4時間の講義が行われ(9:50-12:00および13:00-15:10、金曜日のみ10:50-11:50および12:50-16:10)、総研修時間は100時間である。

2. 講師・スタッフ(敬称略)

 2-1. 研修担当講師

[主任講師] 亀井伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
[外国人講師] エブナ・エトゥンディ・アンリ(カメルーンろう者キリスト教協会)

 2-2. 文化講演講師

永井弓子
宮本律子(秋田大学)
ニクソン・カキリ(Voluntary Service Overseas)
加藤嘉文(和歌山県立みくまの支援学校)

 2-3. 手話通訳者

文化講演の開催時(計4回)に、5名の手話通訳者の方がた(日本手話-日本語通訳者3名、アメリカ手話-日本手話通訳者2名)のご助力をいただいた。

3. 教材

 3-1. 教科書

この研修のために、『On va signer en Langue des Signes d'Afrique Francophone!』(亀井伸孝, 2008)を執筆した。日本の聴者の学生がカメルーンのろう者コミュニティを訪れて見聞を広めるというストーリーに沿って、LSAFの基本を学ぶテキストである。全20課、100ページの本書は、会話スキットのほか、文法、練習問題、アフリカろう文化のコラム、地図などで構成されている。また、手話を学ぶ上での心がまえや、今回考案された手話の表記法の解説を盛り込むなど、手話言語ならではの工夫を凝らした。

 3-2. DVD

カメルーン(フランス語圏)現地で撮影された映像に基づく『DVD : Langue des Signes d'Afrique Francophone』(編集: 亀井伸孝; デザイン: 青木悠一, 2008)を制作した。日仏の2言語を併用し、合計約3,300件(総時間約7時間40分)の動画を収録した本DVDは、手話辞典のほか、会話表現、文法、テキストの会話スキット、自然な会話などを含む総合的な学習教材である。

 3-3. 授業内配布資料

・「手話銀行 (Banque des signes)」: 毎日新しい手話の語を暗記するための語彙のリスト、約650語。
・「写真で学ぶアフリカ(Photo)」: 文化関連語彙・表現を学ぶためのアフリカの写真、180枚。

「最良の教材は授業終了時に完成する」と言えるかもしれない。受講生たちの日々の鋭い質問の洗礼を受け、教材がまさに練り上げられていくという体験をした。いずれ教科書やDVDの改訂版などの形で、この成果を還元できればと考えている。

4. 受講生

登録者は10名で、学部学生から還暦をこえた市民まで、さまざまな年齢層・職種の人が集まった。動機として多くに共通していたのが、(1) 日本手話、アメリカ手話、フランス手話、ケニア手話など、何らかの手話言語を経験したことがあり、(2) さらにレパートリーを増やして異文化への視野を広げたい、という傾向であった。手話に初めて触れる人が2名、LSAFと関わりの深いフランス語の未習者が2名おり、一方でアメリカ手話通訳やフランス留学の経験者もいるなかで、進度のバランスをどのようにとるかがつねに課題であった。しかし、少人数制講義での目配りや、受講生どうしの相互配慮なども功を奏し、1人のこらず高い学習効果を上げた。10人全員のサインネーム(手話のニックネーム)を定め、授業の中でも外でもそれで呼び合う慣習ができ、たいへん仲のよいアットホームなクラスになったことを講師として喜んでいる。平均95.6%の高い出席率をもって閉講し、全員が修了証を受け取った。

なお、受講生のなかにろう者が含まれていたことは特記されるべきであろう。本研修事業が耳の聞こえない市民に対して開かれていくための、ひとつのモデルケースとなったと考えられる。このことを予期して、広報段階から「授業の使用言語は日本語と日本手話」と明記し、申込み時点で、応募者がろう者か聴者か、使用言語は日本語か日本手話かなどの質問を盛り込んだアンケートを行った。これは、事前準備を進めるうえでたいへん有益であったため、今後の研修においても参考になるものと思う。

5. 会場

原則として、AA研3階マルチメディアセミナー室(306)を用いた。8月11-13日の全学閉館期間のみ府中市生涯学習センターを、8月22日の公開文化講演のみマルチメディア会議室(304)を用いた。また、個別面談形式で手話表出試験を行うため、試験日のみ306の隣の調整室(305)を用いた。

6. 授業

原則として、毎日の授業(4時間)を、「復習」「文法」「語彙・文化」「会話」と割り振り、金曜日に週のまとめの試験を行うという形式をとった。以下、概要を記す。

 6-1. 文法(おもに亀井担当)

LSAFの文法は、今回の研修の教材作成の過程で初めて記載された。フランス語文法の用語を借用して作成されたテキストに沿って、主要な文型、疑問詞、形容詞、副詞、時制、関係代名詞、話法など、日常手話会話の中で必要と思われる項目を、全20課に分けて学んだ。LSAFの文法の記載は研究途上にあり、今回の研修を通して明らかになった事項については、改訂版などの形で還元したい。

 6-2. 語彙(おもにエブナ担当)

毎日午後は「手話銀行」という単語丸暗記のコーナーを設けた。「動物」「数」「国名」「形容詞」などのテーマを決め、毎日20-30個の語を覚えるというもので、その数は650語に達した。テキストなどで学んだ語彙とあわせ、受講生が身につけた語は1,000語ほどにおよんだであろうと考えられる。

 6-3. 文化=読解(おもにエブナ担当)

毎日「写真で学ぶアフリカ」というコーナーを設け、手話読解の訓練をした。カメルーンの写真を見ながら、ネイティブ講師の手話による解説をしっかりと見て理解しようというものである。これには、あわせてアフリカの食文化や固有名詞の語彙を学ぶねらいもある。受講生たちの手話読解力は、最終的に、2時間のろう者の手話での講演を通訳なしで理解できるレベルに達した。

 6-4. 会話(エブナ・亀井共同担当)

毎日、その日に習った文法、語彙、文化の知識を用いて、2人1組での会話練習を行った。やがて、各班が寸劇を創作して披露するということが日課となり、必ずギャグを仕込む受講生たちのノリのよさにいつも笑わせていただいた。最終的には、各5人からなるふたつの班による卒業制作演劇として結実し、流暢なLSAFにより演じられた2幕の演劇は、全員の確かな達成ぶりを示すものであった。

 6-5. 試験(エブナ・亀井共同担当)

毎週金曜日は試験日とし、計5回実施した。指文字読解、手話の語の読解、手話の文の読解、そして手話表出の4つの分野を中心に、毎週の新出語彙や文法事項の理解度を見た。読解試験は記述式で行い、手話表出試験のみ別室における個別面接形式を用いた。あわせて授業評価・意見聴取の機会をもった。

7. 文化講演

「アフリカの手話の世界」を統一テーマとし、4人の外部講師による4回の講演、ならびに2人の研修担当講師による2回の講演を企画した。外部講師には、研修担当講師らの専門(中部・西アフリカ)以外の地域の広い話題を提供していただける方にお願いした。いずれも原則として非公開で行われたが、カキリ講師の回のみ公開で開催され、この時は一般を含め約40名の参加者を得た。

(1) 2008年8月8日(金)「北アフリカに住むろう者と触れ合って: モロッコ・チュニジア・エジプトのろう文化」
講師: 永井弓子(ろう者)
講演言語: 日本手話(音声日本語への通訳を用意)

(2) 2008年8月15日(金)「東アフリカ3カ国(ウガンダ・ケニア・タンザニア)のろうコミュニティと手話教育」
講師: 宮本律子(秋田大学、聴者)
講演言語: 音声日本語(日本手話への通訳を用意)

(3) 2008年8月22日(金)「ケニアのろう者コミュニティでろう者とともに働く」(公開開催)
講師: ニクソン・カキリ(Voluntary Service Overseas、ケニアのろう者)
講演言語: アメリカ手話(日本手話および音声日本語への通訳を用意)

(4) 2008年8月29日(金)「ザンビア聴覚障がい児者の実態: 青年海外協力隊活動を通して」
講師: 加藤嘉文(和歌山県立みくまの支援学校、ろう者)
講演言語: 日本手話・日本語(音声日本語への通訳を用意)

(5) 2008年9月2日(火)「西・中部アフリカろう文化紀行: カメルーン、ガボン、ベナン、ガーナ、ナイジェリア」
講師: 亀井伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、聴者)
講演言語: フランス語圏アフリカ手話(通訳なし)

(6) 2008年9月5日(金)「わが国カメルーンとろう者コミュニティ」
講師: エブナ・エトゥンディ・アンリ(カメルーンろう者キリスト教協会、カメルーンのろう者)
講演言語: フランス語圏アフリカ手話(通訳なし)

8. 研修の成果と課題

10人の受講生全員が、十分な読解と表現のスキルを身につけて修了したことが、何よりの成果であろう。また、初めてLSAFのDVD動画辞典と文法書が完成したことも、研究上の大きな達成である。

あわせて、大学の研究・教育の中で外国の手話言語をあつかうことが可能であることを示し、実際にその関連作業のノウハウを蓄積したことが、大きな成果として残ったものと思われる。この事業において、ろう者たちの果たした役割の大きさは特筆すべきであろう。初めてろう者の講師が本研究所に長期間滞在して講師の重責を担い、また、文化講演の外部講師4人のうち3人はろう者であった。手話話者であるろう者の講師や受講生を受け入れることにより、大学・研究所はいっそうその機能と魅力を増すことができるというひとつの好事例となったのではないだろうか。

このほか、一般社会啓発への寄与について触れたい。開講前に2回、開講中に2回の計4回の新聞取材を受け、7件の新聞報道がなされた。このことは、AA研の広報に寄与しただけでなく、大学が本格的な事業として取り組むに値する言語として手話が注目されたことでもあり、手話に対する一般の認知を新たにする効果をも伴ったものと思われる。

課題として、「通学定期券を購入したい」「短期集中、あるいは夜間の開講は可能か」などの希望や問い合わせがあった。また、応募希望者からのFAQ(よくある質問)をすみやかにウェブサイトにあげていくなど、広報面でもいくつかの工夫の余地はありそうである。これらは、受講者層のすそ野を広げるために、長期的な課題として検討に値するであろう。

主任講師たる私の率直な要望としては、外国人ろう者講師招聘に伴う日々の手話通訳や、DVD制作のための映像編集作業が、とりわけ重労働であった。必要に応じて柔軟に、手話通訳者や映像関連の専門家の応援を頼めるなどのサポート態勢について検討すればよかったと思う。教育の質をいっそう高めるためにも、主任講師の負担を多少分散させるシステム作りに取り組んでもよいかもしれない。

9. おわりに: 総合格闘技としての言語研修

教材作成を含むこの1年を振り返って、言語研修は楽しいながらも、実に激しい濃密な時間の連続であった。私はその経験を、「言語研修とは総合格闘技である」ということばにまとめたい。

「主任講師」と言っても、少なくとも授業担当講師のほか、言語調査者、ビデオ編集者、辞典編者、教科書著者、手話通訳者、翻訳者、イベントコーディネータ、通訳コーディネータ、広報担当者、外国人講師お世話係を業務として兼ねていた。時には、受講生の要望や行事運営の状況に応じて、カメラマン、進路相談員、宴会幹事、会場設営者、司会、基調報告者、印刷屋さん、清掃員を兼ねることもあった。およそ大学の知的活動に関わるすべての業務が凝縮されているこの事業は、まさしく「総合格闘技」の名にふさわしい。

少数言語である手話とLSAFの存在を十二分に世に示しきろうと、研究者としての存在証明をかけて身を投じたこの「言語研修」という総合格闘技であったが、それにしても、共同講師1名と受講生10名という同志を得たこの闘いは、何ともさわやかな結末を迎えることができた。この成果と課題を引き継ぐ形で、アジア・アフリカのさまざまな手話言語が日本の語学教育のなかに浸透していくことを願ってやまないし、そのためのノウハウはぜひ提供していきたいと思う。

最後に、お力添えをたまわった多くの方がたに謝意を表したいが、とりわけこの期間をともに格闘した共同講師エブナ・エトゥンディ・アンリ君、10人の受講生のみなさん、AA研所長の大塚和夫先生、研修専門委員会委員長の稗田乃先生ほか教員各位、DVD共同制作者である青木悠一さん、事務の滝澤未希子さん、高坂香さんほか職員各位、文化講演の企画段階からご助言・ご助力をいただいた秋田大学の宮本律子先生に厚くお礼を申し上げたい。そして、カメルーン現地での手話収録モデルでありながらDVDの完成を見ずに天に召された故ンヴェ・フィリップ君の魂に、この終了を報告したいと思う。

/merci/beaucoup/!


■終了報告 (2) データで見る言語研修「フランス語圏アフリカ手話」

■全体の概要
・総時間数: 100時間(4時間×25日)
・登録受講生: 10人
・研修修了生: 10人(修了率100%)
・平均出席率: 95.6%
・試験: 5回

■教材
・教科書(全20課、100ページ)
・DVD(動画ファイル数: 約3,300件、動画総時間数: 約7時間40分)
・「手話銀行」(丸暗記した単語の総数: 約650語)
・「写真で学ぶアフリカ」(用いた写真の総数: 180枚)

■スタッフ: 11人
・研修担当講師: 2人
・外部講師(文化講演): 4人
・手話通訳者: 5人
 日本手話-日本語通訳者: のべ8人(2人×4回、実数として3人が担当)
 アメリカ手話-日本手話通訳者: のべ2人(2人×1回、実数として2人が担当)
 そのほか、研修担当講師が随時通訳を行う。

■使用言語: 15言語
・使用された手話言語: 8言語
(フランス語圏アフリカ手話 (LSAF)、日本手話、アメリカ手話 (ASL)、フランス手話 (LSF)、アラビア手話、ケニア手話 (KSL)、ザンビア手話、台湾手話)
・使用された音声・書記言語: 7言語
(フランス語、日本語、英語、スワヒリ語、エウォンド語、アラビア語、ベンバ語)

■文化講演シリーズ「アフリカの手話の世界」
・開催回数: 6回(外部講師4人、研修担当講師2人)
・実施時間数: 18時間
・文化講演で取り上げた国: 13カ国
(カメルーン、ガボン、ベナン、ガーナ、ナイジェリア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、南アフリカ、エジプト、チュニジア、モロッコ)

■報道
・記者取材: 4回(開講前取材2回、授業参観取材2回)
・報道: 16件(新聞記事7件、メルマガなど9件)


■資料 (ダウンロードできます)

□言語研修の概要
一般来場者に公開で行われた文化講演「ケニアのろう者コミュニティ」(2008年8月22日) における、主催者のあいさつと言語研修の概要説明のパワーポイント資料をダウンロードして見ていただけます。

[こちらからダウンロード](2008年8月22日, PowerPoint, 日英併記)


■教材と授業の進め方

この研修では、カメルーン(フランス語圏)からろう者の講師を招いてフランス語圏アフリカ手話の基礎を学ぶとともに、アフリカのろう者の文化と歴史についての理解を深めます。授業では、この研修のために編集されたテキストを用います。また、自習用教材として、2007年にカメルーン(フランス語圏)現地で撮影された映像データに基づくDVD(手話単語集/基本例文集/会話集)を用意します。

授業の解説では日本語および日本手話を用いますので、耳が聞こえる方も聞こえない方も応募していただけます。特定の言語の学習経験は問いませんが、以下の二点に留意の上、応募してください。

(1) フランス語との関わりが深い手話言語であることから、授業の中でフランス語の書きことばを用いることがあります。これまでフランス語の学習経験がない方も参加できるように配慮しますが、受講者にはフランス語の簡単な読み書きをあわせて学んでいただくことになります。

(2) 手話をまったく学んだことがない方は、手話言語とろう者の文化に関する概説的な本を読むなど、各自で事前学習をしておくことをお勧めします。


■教科書の概要 On va signer en LSAF!

タイトル: On va signer en Langue des Signes d'Afrique Francophone!

著者: 亀井伸孝
監修: エブナ・エトゥンディ・アンリ

発行: 府中: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
発行日: 2008年7月31日
言語: LSAF, フランス語, 日本語
サイズ・形式: A4判/100ページ
非売品
ISBN 978-4-86337-012-8

目次などの詳細は、下記のページをご覧ください(「ちょっと立ち読み」できます)。

On va signer en Langue des Signes d'Afrique Francophone!(日本語ページ)


■DVDの概要

タイトル : DVD : Langue des Signes d'Afrique Francophone (LSAF).

編者: 亀井伸孝
デザイン/システム開発: 青木悠一
手話・フランス語監修: エブナ・エトゥンディ・アンリ

発行: 府中: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
発行日: 2008年7月31日
言語: LSAF, フランス語, 日本語
サイズ・形式: DVD/3.66GB/動画ファイル数約3,300件 (総時間約7時間40分)

調査地: カメルーン共和国中部州ヤウンデ市
調査期間: 2002年12月, 2007年10-11月, 2008年2-3月

■コンテンツ一覧

【動画コンテンツ】
合計約3,300件、総時間約7時間40分の動画が収録されています。

□レッスン (cours) :
テキスト On va signer en Langue des Signes d'Afrique Francophone! に納められているLeçon 0〜Leçon 20のすべての会話スキットおよび指文字と数を、約450件の動画で見ることができます。

□文法 (grammaire) :
人称、肯定文、否定文、疑問文、命令文などの基礎的な文法事項を、約150件の動画で見ることができます。

□会話表現 (conversation) :
「おはよう」「ありがとう」「さようなら」「いくら?」「トイレはどこ?」など、日常生活で便利な会話表現を、約110件の動画で見ることができます。

□辞典 (dictionnaire) :
約2,600件の手話の語の動画を収録した辞典です。名詞、動詞、形容詞、アフリカの固有名詞(地名や人名)、ろう者の文化に深く関わる語などのジャンルにわたります。日本語さくいん約3,050項目(あいうえお順に配列)、フランス語さくいん約3,190項目(alphabet順に配列)から、対応する手話動画を検索することができます。

□自然な会話 (bavardage) :
2人のろう者が自然なスピードでカメルーンの文化について語るシーンの動画2件(総時間57分)を収録しました。これは上級者向けです。

【概説】

□フランス語圏アフリカ手話とは? (Qu'est-ce que la LSAF ?) :
この言語の概説をしています。

□調査概要 (Résumé de recherche) :
このDVDならびにテキストを作成するための言語調査票および調査地、調査期間などについて記しています。

□DVDの凡例 (Comment utiliser ce DVD?) :
DVDの使い方や記号について解説しています。

□権利と使用法 (Copyright) :
DVDの著作権などについて記しています。


■開催の概要

□研修期間と時間
2008年8月4日(月)〜 2008年9月5日(金) 計100時間
 月〜木: 9:50〜15:10
 金: 10:50〜16:10
 土日: 休講

□受講料
60,000円(教材費込み)

□担当講師
[主任講師] 亀井 伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 非常勤研究員)
[外国人講師] エブナ・エトゥンディ・アンリ(カメルーンろう者キリスト教協会 会長)

□研修会場
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1 [地図]
8月11日〜8月13日の3日間は、別の会場で実施予定(会場未定)

□申込みなどの手続き
募集期間: 2008年5月1日(木)〜2008年6月20日(金)郵送必着
詳細は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の言語研修公式ページをご覧ください。

※申込みはしめきりました (2006年6月21日)。


■文化講演シリーズ「アフリカの手話の世界」

この言語研修の一環として、その言語や地域に関わる文化への理解を深めるため、期間中の毎週金曜午後にゲストをお招きしてお話をうかがう「文化講演」シリーズを行います。

この言語研修では「アフリカの手話の世界」を統一テーマとし、4名の外部講師による4回の文化講演を計画しています。ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、南アフリカ、エジプト、チュニジア、モロッコのろう者と手話に関するお話をうかがいます。

また、本言語研修の担当講師(亀井、エブナ)が、それぞれの調査・生活経験に基づいた文化講演を1回ずつ行い、カメルーン、ガボン、ベナン、ガーナ、ナイジェリアのろう者と手話言語について学びます。

100時間のうち18時間がこれら6回の文化講演にあてられ、全体でアフリカ13カ国のろう文化に関する知見を深めます。

※言語研修の受講生対象の講演であり、原則として非公開で行われます。
※8/22(カキリ講師)の回のみ、公開で開催されます。

(1) 2008年8月8日(金)(研修受講生のみ、非公開)
「北アフリカに住むろう者と触れ合って: モロッコ・チュニジア・エジプトのろう文化」
 講師: 永井弓子
 講演言語: 日本手話(音声日本語への通訳を用意します)
 ※講師は日本のろう者
(2) 2008年8月15日(金)(研修受講生のみ、非公開)
「東アフリカ3カ国(ウガンダ・ケニア・タンザニア)のろうコミュニティと手話教育」
 講師: 宮本律子(秋田大学教授)
 講演言語: 音声日本語(日本手話への通訳を用意します)
 ※講師は日本の聴者
(3) 2008年8月22日(金)(公開開催、詳細はこちらの案内を参照)
「Working with the Deaf People in Kenyan Deaf Community」
(ケニアのろう者コミュニティでろう者とともに働く)
 講師: Nickson Kakiri(ニクソン・カキリ)(Disability Mainstreaming Specialist, Voluntary Service Overseas (VSO))
 講演言語: アメリカ手話(日本手話および音声日本語への通訳を用意します)
 ※講師はケニアのろう者
(4) 2008年8月29日(金)(研修受講生のみ、非公開)
「ザンビア聴覚障がい児者の実態: 青年海外協力隊活動を通して」
 講師: 加藤嘉文(和歌山県立みくまの支援学校教諭)
 講演言語: 日本手話(音声日本語への通訳を用意します)
 ※講師は日本のろう者
(5) 2008年9月2日(火)(研修受講生のみ、非公開)
「Les voyages dans les cultures des sourds en Afrique Centrale et Occidentale : Cameroun, Gabon, Bénin, Ghana et Nigeria」
(西・中部アフリカろう文化紀行: カメルーン、ガボン、ベナン、ガーナ、ナイジェリア)
 講師: 亀井伸孝(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
 講演言語: フランス語圏アフリカ手話(通訳はありません)
 ※講師は日本の聴者
(6) 2008年9月5日(金)(研修受講生のみ、非公開)
「Mon pays du Cameroun et la communauté des sourds」
(わが国カメルーンとろう者コミュニティ)
 講師: Evouna Etoundi Henri(エブナ・エトゥンディ・アンリ)(Association Chrétienne des Sourds du Cameroun)
 講演言語: フランス語圏アフリカ手話(通訳はありません)
 ※講師はカメルーンのろう者


■公開講演会「ケニアのろう者コミュニティ」(8/22)

このたび、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所では、ケニアのろう者ニクソン・カキリ氏を招き、ケニアにおけるろう者コミュニティと手話の現状に関する講演をしていただきます。

カキリ氏は日本財団の奨学金を受け、アメリカのろう者の大学ギャローデット大学で国際開発学を修め、現在は国際NGOのスタッフとして世界を舞台に活躍しています。

アフリカろう者の言語と文化、それらをとりまく課題等に関する報告をいただき、フロアをまじえた討論を通して、このテーマへの理解を深めることを目的とします。

(※)本講演は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所2008年度言語研修「フランス語圏アフリカ手話」の一環として行われます。言語研修の通常講義は非公開ですが、この講演のみ一般公開行事として開催されます。

■講演会概要

タイトル「ケニアのろう者コミュニティ (Deaf community in Kenya)」
講師 ニクソン・カキリ(Nickson Kakiri)
講師所属:Disability Mainstreaming Specialist, VSO
日時:2008年8月22日(金)13:00〜16:00(12:30開場)
場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所3階 304室

■参加資格について

どなたでもご参加いただけます。参加費無料、事前申込みは不要です。

■使用言語について

講演はアメリカ手話で行われます。日本手話および音声日本語への通訳を用意しています。

■関連サイト

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の交通案内
アジア・アフリカ言語文化研究所公式サイト
言語研修「フランス語圏アフリカ手話」


■よくあるご質問

言語研修「フランス語圏アフリカ手話」に関心のある方がたからいただいたお問い合わせのうち、代表的なものをまとめました。応募の参考にしてください。

□8/4月〜9/5金というのは、その期間の平日すべてということですか。

はい。4時間×25日=100時間の語学の集中講義です。

□全日程は参加できないのですが。

どのくらい出席するかは、受講者の自由にゆだねられます。ただし、そのために補習をしたり、受講料の減免をしたりすることはありません。また、研修の最後に「成績証明書」が交付されますが、その評価に影響する可能性があります。

□先着順ですか。それとも、応募〆切後の選考になりますか。

先着順ではなく、応募〆切の後に選考が必要かどうかを判断します。応募者数が定員を超えた場合、受講生の人数制限が必要であるという観点から、書類選考が行われることがあります。選考結果は、〆切後の研究所における決定を経て、すみやかに応募者に連絡されます。

□受講料6万円には、消費税などが加算されますか。

されません。受講が決まった方には、6万円ちょうどを指定の方法で大学に納付していただきます。教材費や手話通訳経費など、正課に関わる費用を別途負担いただくことはありません。

(授業後の懇親会など、任意参加の企画については、開催の折に費用を出し合うことがありえます。しかし、これらはあくまでも課外の自由参加のものであり、正課である言語研修の受講料とは関わりのないものです)

□語学力はどのくらいのレベルに達しますか。

この手話言語について経験のない方を想定して開講し、日常的な会話に不自由しないレベルを目指します。少人数制の授業で、その手話を第一言語とするアフリカのろう者が直接指導しますので、個人差にもあるていど対応できると思われます。

□アメリカ手話(ASL)と同じですか。

ASL由来の語彙とフランス語の口型や語順という、両言語の特徴をあわせもつ手話ですので、ASLと同一ではありません。ただし、ASLとフランス語の両方の素養がある方であれば、のみこみは早いと思います。また、アフリカの食文化や固有名詞など、アメリカにはない手話語彙も多く、そのあたりを文化的背景とともに学ぶことも目的の一つとしています。

□フランス手話(LSF)と同じですか。

いいえ。フランス手話とは異なる言語です。歴史的にも関わりがありません。

(もっとも、厳密に言えば、フランス語圏アフリカ手話(LSAF)のルーツとなったアメリカ手話のさらなるルーツをたどればフランス手話(LSF)に行きつきますから、まったく無縁の言語とは言えません。しかし、分岐してから200年近くたった今日、LSAF と LSF はまるで異なったものとなっています)

□フランス語の経験が必要でしょうか。

その経験がなくても参加できるように、教材や指導方法に工夫をこらします。ただし、フランス語の知識がまったくないままではこの手話言語を正しく学ぶことができませんので、手話と平行してフランス語の読み書きを学ぶ努力をしていただくことを望みます。

(むしろ、ろう者の方にとっては、この手話言語の習得を通してフランス語も一緒に学べる機会になるかもしれません)

□言語学を専門的に学んだ経験がないのですが。

この言語研修は「語学」ですので、言語学の専門的な知識は必要ありません。

□語学以外の文化や歴史については、どのくらい学べますか。

語学の授業とは別に、その言語や地域に関わる文化への理解を深めるため、毎週金曜午後にゲストをお招きした講演を行います(「文化講演」参照)。

また、毎日の語学を指導するのがカメルーンのろう者で、生活を題材とした会話練習をしますので、語学の中でもしぜんとアフリカの生活、文化、歴史をあわせて学ぶことになるでしょう。

□手話をまったく学んだことがないのですが、事前準備は必要でしょうか。

手話を学んだことのない方も応募していただけます。ただし「手話は世界共通のジェスチャーだ」といったような誤解をしたまま開講日を迎えてしまった場合、語学学習の成果が上がりません。受講することが決まった方には、講師から事前学習に関する助言をいたします。

□来日するアフリカのろう者講師は、他の場所でも講演などをするのでしょうか。

本言語研修以外の行事について、大学としては行いません。それ以外の私的な領域での活動については本人次第という面があり、大学として、また本言語研修担当の主任講師として、何とも申し上げられません。

□このような手話の言語研修は、今後もありますか。

「言語研修」の事業それ自体は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で毎年行われています。しかし、とりあげる言語は毎回変わりますし、そのほとんどは音声言語です。アフリカや他の地域の手話言語の研修が再び行われるかどうか、それはいつか、などについてはまったく未定です。

これまで行われた言語研修の言語一覧


■報道

■デフニュース (2008/11/13) [DEAF-NEWS:07012]
「フランス語圏アフリカ手話」関連報道と報告

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所2008年度言語研修「フランス語圏アフリカ手話」(2008年8-9月)の終了にともなう関連報道と最終報告についてお知らせします。

【新聞報道】
The Daily Yomiuri (September 11, 2008): page 14

【ウェブサイト報道】
毎日新聞ユニバーサロン (2008年10月10日)

【最終報告書】
言語研修「フランス語圏アフリカ手話」最終報告書

■毎日新聞ユニバーサロン (2008/10/10)
ユニバーサロンリポート
《フランス語圏アフリカ手話》カメルーンのろう者が東京外語大で講義

東京外語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(東京都府中市)はこの夏、カメルーンのろう者を講師としてフランス語圏アフリカ手話の言語研修を開講した。

[記事の全文を見る]

The Daily Yomiuri (September 11, 2008)
Sign language from Africa
Midori Matsuzawa / Daily Yomiuri Staff Writer

The eyes of the 10 participants in a recent language training course organized by Tokyo University of Foreign Studies in Fuchu, Tokyo, were fixed on a lecturer from Cameroon, who was explaining his language and culture using his whole body. But most of what could be heard from the room was the students' frequent laughter in response to their teacher's humorous explanations.

The lecturer, Evouna Etoundi Henri, 37, was giving the course in a sign language used in his country and the surrounding region. He had come all the way from the western African country to teach LSAF--an abbreviation for Langue des Signes d'Afrique Francophone, the sign language of the French-speaking region of Africa--as part of the university's annual intensive courses on Asian and African languages.

[記事の全文を見る]

The Daily Yomiuri (September 11, 2008): page 14.

■日本財団ブログ (2008/08/13)
公開講演会「ケニアのろう者コミュニティ」

このたび、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所では、ケニアのろう者ニクソン・カキリ氏を招き、ケニアにおけるろう者コミュニティと手話の現状に関する講演をしていただきます。

[記事の全文を見る]

■デフニュース (2008/08/13) [DEAF-NEWS:06749]
公開講演会「ケニアのろう者コミュニティ」

このたび、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所では、ケニアのろう者ニクソン・カキリ氏を招き、ケニアにおけるろう者コミュニティと手話の現状に関する講演をしていただきます。

[記事の全文を見る]

■毎日新聞ユニバーサロン (2008/08/11)
公開講演会「ケニアのろう者コミュニティ」
日程: 2008年8月22日(金)
名前: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

[記事の全文を見る]

The Daily Yomiuri (June 5th, 2008)
Lectures on Central Asian languages, African sign language

Tokyo University of Foreign Studies is seeking participants in intensive courses to learn three African and Central Asian languages this summer. The annual programs will focus this year on Langue des Signes d'Afrique Francophone (LSAF), the sign language used in Africa's French-speaking areas, Mongol and Tuba, which is spoken in the Russian Federation. The lectures will be led by native signers or speakers of the languages as well as Japanese experts in each field.

The Daily Yomiuri (June 5th, 2008) page: 14.

■IFE FOUNDATION「アフリカニュース」(2008/06/01)
日本アフリカ学会 第45回学術大会開催

5月24日(土)と25日(日)の2日間、龍谷大学(京都市伏見区)で「日本アフリカ学会 第45回学術大会」が開催された。
(…)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の亀井伸孝研究員は、ポスター掲示で「アフリカの手話言語に関するデータベースの構築」について発表。カメルーン人ろう者が日常生活に用いているフランス語圏アフリカ手話の語彙を動画データにし、コンピュータで学べるシステムを紹介した。

[記事の全文を見る]

IFE FOUNDATION / NPO法人 IFE「アフリカニュース」(2008/06/01)

(引用者注)この記事で紹介された「データベース」とは、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の言語研修事業の一環として制作される「フランス語圏アフリカ手話動画辞典」のことです。言語研修の受講生に、教材として配布されます。

■読売新聞 (2008/05/30)
アフリカ手話の研修
8〜9月 外語大が参加者募集

東京外国語大学(府中市朝日町3)アジア・アフリカ言語文化研究所は、今夏に開く言語研修で「仏語圏アフリカ手話」を取り上げる。国内では初の試みといい、同研究所の研究員で、担当講師の亀井伸孝さん(36)は「世界には多様な言語文化があることを知ってほしい」と話している。

[記事の全文を見る] または [記事の全文を見る] (同文)

『読売新聞』2008年5月30日朝刊. 30ページ (多摩版).

■毎日新聞 (2008/05/20)
東京外大AA研 アフリカの手話学ぼう
現地ろう者講師に8月 市民からも受講者募集

東京外国語大アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)は今夏、アフリカの手話の研修を現地のろう者を講師に招いて開く。1カ月間で日常会話レベルまで習得するのが目的。外国の手話研修は全国的にも珍しく、学生をはじめ一般市民から受講者を募集している。

[記事の全文を見る]

『毎日新聞』2008年5月20日朝刊. 26ページ (東京版).

■毎日新聞ユニバーサロン (2008/05/16)
現地のろう者が東京外語大で講義--フランス語圏アフリカ手話受講生を募集

東京外語大アジア・アフリカ言語文化研究所(東京都府中市)は、8月に開講するフランス語圏アフリカ手話夏期集中講座の受講生を募集している。

[記事の全文を見る]

■デフニュース (2008/05/15)
アフリカ手話の報道

■大学プレスセンター (2008/05/13)
■講師による補足広報サイト
■「文化講演」とは
東京外国語大学の言語研修「フランス語圏アフリカ手話」の一環として、その言語や地域に関わる文化への理解を深めるため、期間中の毎週金曜午後にゲストをお招きしてお話をうかがう「文化講演」シリーズを行います。

[記事の全文を見る]

■大学通信 (2008/05/13)
【東京外国語大学】東京外大が日本で初めてアフリカのろう者の講師を招聘し、「フランス語圏アフリカ手話」の語学研修を実施

ろう者(聴覚障害者)の手話が地域によって異なる自然言語であるという認識が近年広まりつつあることを受け、東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所では日本で初めて、アフリカのカメルーンからろう者の講師を招き、「フランス語圏アフリカ手話」の言語研修を開催する。

[記事の全文を読む]

■大学プレスセンター (2008/05/13)
東京外大が日本で初めてアフリカのろう者の講師を招聘し、「フランス語圏アフリカ手話」の語学研修を実施

ろう者(聴覚障害者)の手話が地域によって異なる自然言語であるという認識が近年広まりつつあることを受け、東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所では日本で初めて、アフリカのカメルーンからろう者の講師を招き、「フランス語圏アフリカ手話」の言語研修を開催する。

[記事の全文を読む]

■デフニュース (2008/04/21)
言語研修「フランス語圏アフリカ手話」

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
2008(平成20)年度 言語研修募集要項

[記事の全文を見る]

■『いくお〜る』聴覚障害者向けの情報ブログ (2008/04/12)
【研修生募集】フランス語圏アフリカ手話

東京外国語大学 2008(平成20)年度 アジア・アフリカ言語文化研究所 言語研修募集要項

[記事の全文を見る]


■東京外国語大学プレスリリース

2008年度東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所「言語研修生募集」について

2008年5月1日

アジア・アフリカ地域での現地調査研究やその他の専門的業務に役立たせることを目的として、現地語の会話・読み書きなどの基礎学習を中心とした言語研修を短期集中的に実施しています。この研修は、日本の専門研究者と母語話者とが一緒に教授にあたる生きた言語教育であるのが特徴となっています。今年度は、モンゴル語、フランス語圏アフリカ手話、トゥヴァ語の言語研修を別記実施要領に基づいて実施します。

ろう者(聴覚障害者)の手話が地域によって異なる自然言語であるという認識が近年広まりつつあることを受け、本研究所ではアフリカのカメルーンからろう者の講師を招いて、「フランス語圏アフリカ手話」の言語研修を開催します。「フランス語圏アフリカ手話」は、西・中部アフリカのフランス語圏の国ぐにのろう者たちの間で広く話されている手話言語です。これは、アフリカに伝播したアメリカ手話に音声フランス語の特徴が加わるという変容の中で成立した、アフリカ生まれの手話で、やがてろう者たちによるろう教育事業の中で普及し、今日ではアフリカの広い地域のろう者たちの間で用いられています。

【研修の特徴】
1) 約40年におよぶ本学の言語研修の歴史の中で、初めて手話を取り上げます。アフリカの手話の語学講義は日本で初めてであり、世界的にもまれな事業です。また、アフリカのろう者の講師を招聘することも、日本の語学教育の歴史の中で初めてのことです。
2) 手話の動画辞典(DVD)を作成し、受講生に配布します。日本語やフランス語から手話の語をひくことができるものです(単語をクリックすると手話動画が再生されます)。
3) 研修の一環として、モロッコ、ケニア、ザンビアなどアフリカ諸国の手話とろう者をテーマとしたシリーズの講演を企画します(受講生対象、非公開)。アフリカの手話の研究者が集まる、日本で初めての機会です。なお、来日ケニア人ろう者の講演の時間帯のみ、一般公開で行う予定です(日本語および日本手話への通訳が付きます)。

【開催にいたる背景とねらい】
・アジア・アフリカ言語文化研究所は、日本ではふだん学習する機会の少ない諸外国のさまざまな言語をとりあげ、その学習の場を提供する事業を行っています。
・世界各地のろう者たちの手話は、地域によって異なる自然言語ですが、日本の語学教育の中ではほとんど取り上げられてきませんでした。
・近年、日本手話の教育に取り組む大学が少しずつ現れ始めています。本学においても、音声言語と並んで、諸外国の手話に関する研究や教育が少しずつ取り組まれています(学部生向けの講義「日本手話」「アメリカ手話」の開講、フランス語圏アフリカ手話やマダガスカル手話の研究)。
・本研究所は「手話が言語である」との認識に立ち、一般社会における手話への理解を深めることをねらいとして、これまで諸外国の音声言語のみあつかってきた言語研修の一環に、初めて手話を取り入れることになりました。中でも、アフリカのろう者たちの間で広く用いられている代表的な手話である「フランス語圏アフリカ手話」をあつかうこととしました。
・手話の教育を行うことを通して、言語や文化、そしてアフリカに対する複眼的な理解の姿勢をつちかうことをねらいとします。

【インパクト・効果】
・この言語研修は、本学の学生のみならず、広く一般市民のみなさんが応募、参加できる形で開催されます。手話の中にも多言語世界が広がっているということを、一般社会のみなさんに広く知っていただくよい機会となります。
・日本のろう者(聴覚障害者)の人たちが諸外国の手話を学ぶ機会を、大学が提供するという試みの先駆けです。
・また、耳の聞こえる人たちが、音声言語の多文化世界とならんで、手話の多文化世界にふれることができる得がたい機会となります。
・アフリカ開発や国際交流・支援を考える上で、アフリカの障害を持つ市民や、手話を話すマイノリティのことをあわせて理解する絶好の機会となります。

募集期間は、各言語とも2008年5月1日(木)から6月20日(金)まで、実施期間は、8月4日(月)から9月4日(木)又は5日(金)、募集人員は、各10名。受講料は、言語により、60,000円から75,000円。詳細は、同研究所の以下のホームページをご参照ください。
http://www.aa.tufs.ac.jp/project/language/gengokensyu2008.html

なお、本言語研修は、同研究所が、大阪大学世界言語研究センターの協力を得て実施するものです。

問い合わせは、東京外国語大学研究協力課全国共同利用係(Tel. 042-330-5603)まで。

(別記実施要領)「2008(平成20)年度東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所言語研修生募集要項」


■参考文献

Christian Mission for the Deaf. 1956-2007. Silent Witness; Deaf Witness.
Christian Mission for the Deaf. CMD Website.
Foster, Andrew J. 1975. Social aspects of Deafness: the school years. In: VIIth World Congress of the World Federation of the Deaf: Full citizenship for all Deaf people (July 31-August 8, 1975. USA). 354-356. (=フォスター, アンドリュー J. 1975=2006. 亀井伸孝訳「ろうの社会的側面: 学齢期」亀井伸孝. 2006.『アフリカのろう者と手話の歴史: A・J・フォスターの「王国」を訪ねて』東京: 明石書店. 219-227.)
Higgins, Francis C. 1948. Schools for the deaf in the world. In: American Annals of the Deaf. 93-1 (January 1948). 49-60.
Institute of German Sign Language and Communication of the Deaf, University of Hamburg. International Bibliography of Sign Language.
Kamei, Nobutaka. 2006. The birth of Langue des Signes Franco-Africaine: Creole ASL in West and Central French-speaking Africa. In: Online conference paper of Languages and Education in Africa Conference (LEA2006). Oslo: University of Oslo.
Lane, Harlan, Robert J. Hoffmeister & Benjamin Bahan. 1996. A journey into the Deaf-world. San Diego: Dawn Sign Press.
Monaghan, Leila, Constanze Schmaling, Karen Nakamura, & Graham Turner eds. 2003. Many ways to be Deaf. Washington, DC: Gallaudet University Press.
SIL International. Ethnologue: Languages of the world.
Tamomo, Serge. 1994. Le langage des signes du sourd Africain Francophone. Cotonou, Bénin: PEFISS.
Titus, Marius Rock. 1994. Better education for Deaf people in French-speaking Africa. In: Erting, Carol J., Robert C. Johnson, Dorothy L. Smith & Bruce D. Snider eds. The Deaf way. Washington, DC: Gallaudet University Press. 800-804.

亀井伸孝. 2004.「アフリカの手話言語」『アフリカ研究』(日本アフリカ学会) 64 (2004.3): 43-64.
亀井伸孝. 2006.『アフリカのろう者と手話の歴史: A・J・フォスターの「王国」を訪ねて』東京: 明石書店.
亀井伸孝. 2007.「フランス語圏のアメリカ手話: 西・中部アフリカの接触手話言語 (上)」『月刊言語』36(9) (2007.9): 68-74.
亀井伸孝. 2007.「フランス語圏のアメリカ手話: 西・中部アフリカの接触手話言語 (下)」『月刊言語』36(10) (2007.10): 90-97.


■関連日記(ジンルイ日記から)

■辞書の仕事、メールの仕事 (2008/09/30)
■そしてまた1人の手話話者となり (2008/09/19)
■ようやく訪れた夏休み (2008/09/17)
■日本手話学会での招待講演 (2008/09/15)
The Daily Yomiuri に言語研修の記事掲載 (2008/09/11)
■手話言語研修・週末日記 (5) 終わりよければすべてよし (2008/09/06)
■手話言語研修・週末日記 (4) 急増するリクエスト (2008/08/30)
■日本手話学会での共同基調講演 (2008/08/28)
■アフリカ3カ国のろう者、東京でそろい踏み (2008/08/24)
■手話言語研修・週末日記 (3) 折り返し地点をすぎて (2008/08/23)
■サイボーグ手話通訳者の夢 (2008/08/17)
■手話言語研修・週末日記 (2) 夏期休校中の強行軍 (2008/08/16)
■手話言語研修・週末日記 (1) この多様な受講生たち (2008/08/09)
■フランス語圏アフリカ手話の言語研修、本日開講! (2008/08/04)
■フィリップへの恩返し (2008/07/31)
■DVD手話動画辞典・教材の完成 (2008/07/30)
■ポスター発表は楽し (2008/05/25)
■文化講演シリーズ「アフリカの手話の世界」 (2008/05/13)
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■テラバイトディスクに負けそうな研究者 (2008/04/14)
■フィリップの贈り物 (1)-(5) (2007/12/01-05)
■カメルーン日記2007 (1)-(23) (2007/10/17-11/17)
■2年半ぶりのカメルーンへ (2007/10/16)


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