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亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

『支援のフィールドワーク: 開発と福祉の現場から』
ちょっと立ち読み

小國和子・亀井伸孝・飯嶋秀治編
京都: 世界思想社
2011年4月20日刊行

日本語 / English / Français
最終更新: 2011年6月3日

支援のフィールドワーク

■ちょっと立ち読み

■はじめに: 支援のある風景を描く……亀井伸孝・小國和子

この本は、「支援」と「フィールドワーク」のふたつのことばが出会うところで生まれた。

「支援」とは「人を助けること」である、としておこう。ここではおおむね、国際開発、社会福祉、医療、災害救助、平和構築など、対人支援に関わる領域を想定している。

「フィールドワーク」とは、「ある場所に滞在して関係を作りながら相手を理解すること」であると考えることにしよう。おおむね、文化人類学や社会学などで行われてきた、現地滞在型の調査の手法のことを指している。

このふたつの営みが交差する地点、それが、本書で取り上げる「支援のフィールドワーク」である。

今、なぜこのテーマに注目すべきなのか、理由はふたつある。ひとつは、対人支援にかかわる領域で、「相手のことをもっとよく理解しながら支援すべきではないか」という機運が高まっているからである。たとえば、国際開発や社会福祉の分野で、異文化理解や質的調査ということばとともに、相手を理解することの必要性が唱えられる様子がしばしば見られることだろう。

もうひとつの理由は、フィールドワークを伝統的に得意としてきた研究分野で、「その研究をいかに社会のために役立てるか」が焦眉の課題となってきたからである。調査地で得られた知識を収奪するだけではフィールドワークの未来はない、現地社会にとって意義のある実践や応用についても考えなければ、という論調が、近年とみに高まっている。

これら支援実務と研究の両方の分野における要請を背景として、「支援のフィールドワーク」というテーマが生まれた。それは、「理解をふまえて支援したい人たち」にも、「支援を含めて理解をしたい人たち」にも、どちらの期待にも応えることができる、魅力的なテーマであるに違いない。

では、「支援のフィールドワーク」とは何か。さきほどの定義に従えば、「人を助ける目的で、ある場所に滞在して関係を作りながら相手を理解すること」と言っていいだろうか。しかし、実は、それほど単純なものではない。そこに、このテーマの難しさとおもしろさがある。(…)

→ 続きは本書で



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