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発表要旨
最終更新: 2007年3月19日

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関学COEワークショップ「多文化と幸せ」
2005年1月24日

「アフリカの野生動物保護における地域住民の『ニーズ』: 『意図的』な『ズレ』と調査者の役割」
西崎 伸子 (日本学術振興会, 京都大学)

キーワード:野生動物保護、ニーズの発信、コミュニティ・コンサベーション、エチオピア


■発表の要旨
「開発」の分野において、「ニーズ」に「多様性」が生じる背景には、政治的意図や地域の論理があり、使う人々の立場によって操作可能である。この発表の目的は、アフリカで現在おこなわれている野生動物保護において「住民参加」が重要視される中で、保護側と住民側とが交渉の争点(「ニーズ」)を意図的にズラしている事例を報告し、それを理解した上で、よそ者である調査者や援助実施者が、どのように野生動物「保護」にかかわれるのかを議論することであった。

事例では、エチオピア南部のセンケレ自然保護区と先住民アルシ・オロモの関係を検討した。保護区や国営農場の設立など、国家による土地の囲い込みによって、祖先の歴史が刻み込まれた「広い土地」はアルシ・オロモから切り離された。人と土地を分かつような野生動物保護に対して、人々は様々な方法で抵抗をおこなってきた。同時に、人々が、自分たちのもの、あるいは大切であると認識した水や土地などの自然資源に対しては、外部の影響に対応しながら、独自の方法で資源を「管理」するしくみをつくりだしていた。このような状況において、国家による土地の囲い込みは、人と土地を分断しただけでなく、人と野生動物のかかわりを希薄化させた。「真」の争点は土地問題であるが、保護当局側は野生動物の減少のみを争点としてとりあげ、住民側が彼らの「真のニーズ」である土地不足を交渉材料に持ち込まず意図的に争点をズラしている。両者それぞれの「思惑」によって争点がズラされることによって、現在、野生動物保護を最優先する当局と土地を必要とするコミュニティとの間の交渉が難航していることを報告した。

最後に、このような状況において、調査者である私(よそ者)がどのような態度で、どのようにして、調査対象地の人々とかかわっていけばいいのかについて議論した。

■参考文献
赤坂むつみ. 2003.「日本の市民による森林保全活動−社会主義国ラオスでの「外部者」の役割」井上真編『アジアにおける森林の消失と保全』東京: 中央法規.
西崎伸子. 2001.「人と土地を分かつ自然保護: エチオピア、センケレ・スウェニーズハーテビーストサンクチュアリーと地域住民の関係」『アフリカ研究』No. 58, pp. 59-73.
Nishizaki, Nobuko. 2004. "Resisting Imposed Wildlife Conservation: Arssi Oromo and the Senkelle Swayne's Hartebeest Sanctuary, Ethiopia", African Study Monographs, Vol. 25, No 2.

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