AACoRE > Laboratories > Kamei's Lab > Index in Japanese
ILCAA
亀井伸孝の研究室
亀井伸孝

ジンルイ日記

つれづれなるままに、ジンルイのことを
2010年12月

日本語 / English / Français
最終更新: 2010年12月31日
[←前の日記へ][今月の日記へ] [テーマ別目次へ] [月別目次へ][次の日記へ→]

■マイ重大ニュース2010 (2010/12/31)
■アフリカ重大ニュース2010 (2010/12/28)
■手話の世界の新語・流行語 (2010/12/27)
■聖夜のゴミ袋 (2010/12/24)
■政党交付金と科研費 (2010/12/12)
■変な研究をせよ (2010/12/07)
■特定の分析方法をもつ学問 (2010/12/03)
■「ユ」の字の形をした駅 (2010/12/01)


2010年12月31日 (金)

■マイ重大ニュース2010

いろいろあった、今年一年を振り返っています。日記を抜粋しながらの、マイ重大ニュース。

(1位) 大阪国際大学に着任
大阪国際大学 4月、大阪国際大学の人間科学部・心理コミュニケーション学科に、准教授として着任しました。

研究漬けだった東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の暮らしから、毎日芸人のように講義室でしゃべりまくり、40人以上のゼミ生たちの担任の先生としてあれこれお世話する生活へと移行しました。「どんな難解なことでも、ひたすらかみくだいて語る」という力量が、日々問われました。同時に、かみくだいて語りさえすれば、「どんな学生も調査/研究できるようになる」という手応えを感じることができました。チャレンジングで達成感があった、この一年。

【関連日記】
■変な研究をせよ (2010/12/07)
■2回生たちのパネル発表会 (2010/11/16)
■「ポッキーの日」の研究室の風景 (2010/11/11)
■わき出す調査法 (2010/10/07)
■毎週9コマ授業の期間に突入 (2010/07/01)
■講義室でのひとり理論闘争 (2010/05/22)
■ピン芸人としての大学教師 (2010/04/30)
■自分探さず、ネタ探せ (2010/04/22)
■心理学と文化人類学 (2010/04/10)
■大阪国際大学に着任 (2010/04/01)

(2位) 『森の小さな〈ハンター〉たち』刊行
森の小さな〈ハンター〉たち 博士論文をもとにした民族誌『森の小さな〈ハンター〉たち: 狩猟採集民の子どもの民族誌』が、2月にぶじに刊行されました。

大学院生時代、初めてアフリカ現地調査をしたときの私のフィールドワークの原点を、書物の形で世に紹介できたのは、この上ない喜びです。お世話になった狩猟採集民の子どもたち、現地のみなさま、大学院の指導教員とアフリカ研究の先人の各位に対して、ようやく長年の宿題を出すことができたような思いです。

【関連ページ】
『森の小さな〈ハンター〉たち: 狩猟採集民の子どもの民族誌』

【関連日記】
■『森の小さな〈ハンター〉たち』、野田正彰氏が長文書評 (2010/04/05)
■『森の小さな〈ハンター〉たち』週刊朝日で紹介 (2010/03/30)
■博士論文の刊行報告 (2010/03/21)
■『森の小さな〈ハンター〉たち』刊行を楽しみに (2010/02/04)
■今しかできない苦労がある (2010/01/29)
■JAL破綻の報を聞きながらアフリカの森を思う (2010/01/19)

(3位) コートジボワールで2度の現地調査
2010年8月, アビジャン 2-3月、8月と、2回にわたって、コートジボワールでろう者コミュニティに関する現地調査の機会を得ることができた。

1回目は、ろう者の文化と歴史に関する気ままな参与観察。2回目は、手話の語彙収集に向けたハードな撮影作業。どちらについても、信頼関係が深まるとてもいい調査ができた。と思ったとたん、一転してコートジボワールが大統領選挙をめぐる政局混乱のために緊迫の事態に。2011年、また現地で一緒に仕事ができる、平和なコートジボワールに戻ることを心より祈りたいと思います。

【関連ページ】
調査歴

そのほかのニュース。

・岩波書店『途上国障害者の貧困削減: かれらはどう生計を営んでいるのか』刊行(関連日記)
・生活書院『万人のための点字力入門: さわる文字から、さわる文化へ』刊行(関連日記)
・日本手話学会『手話学研究』「特集・手話言語学の50年」刊行(関連日記)
・ツイッター(@jinrui_nikki)を盛んに使うようになる(関連日記)(関連日記)
・大阪国際大学の学科でもツイッター広報(@oiu_shinri)開始(関連日記)

など。

今年一年、お引き立てくださいました各位に、あらためまして心よりお礼申し上げます。来年がみなさまにとりまして、さらにすばらしい年となりますように。


2010年12月28日 (火)

■アフリカ重大ニュース2010

私見で選んだ、今年のアフリカの重大ニュース3つです。

(1位) 「『アフリカの年』50周年」(年間を通じて)
1960年、アフリカ諸国(おもに旧フランス領植民地の諸国)がいっせいに独立を果たし、「アフリカの年」と呼ばれました。今年、その国ぐにがそろって建国50周年を迎えました。次の50年はどうなるでしょうか。平和と繁栄のアフリカへ!
(2位) 「南アフリカでサッカーW杯大会開催」(6-7月)
アフリカ大陸で、初のサッカーワールドカップ大会が開催されました。準備不足や治安が問題視されていたものの、盛大に開催、「ぶう〜」という不思議な音で応援席を席巻したブブゼラも流行ります。次はオリンピック招致だと、ズマ大統領は意気込んでいるそうです。
(3位) 「コートジボワールで大統領選をめぐる混乱」(10-12月)
大統領選挙の結果をめぐって、ローラン・バボ前大統領と、アラサン・ワタラ候補の両方が大統領就任宣言、アビジャンにふたつの内閣が並び立つ事態になってしまいました。死傷者も出て、国外に脱出する人たちも増えているとか。一刻も早い事態の収拾を祈ります。

2011年は、年明け早々、スーダン南部が独立を選択するかどうかの住民投票が始まります。2011年が、アフリカと世界にとってすばらしい年となりますように。


2010年12月27日 (月)

■手話の世界の新語・流行語

今年の新語・流行語というのが話題になる季節です。

はて、今年の手話の新語・流行語は何だったのだろう。

個人的に思い返してみれば、春頃、「ツイッター」という新語をろう者たちに教わったのが印象的だった。

最初に教わった時は、「ツイッター」を意味する語にはいくつかのヴァリエーションがあるということだった。ただ、そのなかでも、指文字「つ」をくちばしにしてさえずるのが主流になっているのかなと思う(あくまでも、私の周囲における用例に限っての話ですが)。

みなさんにとっての、今年の新語は何だったでしょうか。手話の新語・流行語大賞などを決めるイベントがあってもいいのでしょうね。


2010年12月24日 (金)

■聖夜のゴミ袋

クリスマスイブ。サンタさんが、大きな袋を持って町を歩いていました。

おや、こんなところに、と思ってよく見てみたら、赤白の服を着させられたコンビニの店員が、ゴミ置き場に「燃えるゴミ」を出していたのでした。

深夜労働だったり、非正規雇用だったり、低賃金だったり、名ばかり店長だったり、残業だったり。そのサンタさんの袋の中には、不景気日本のいろんな風景がぎっしりと詰まっていたように見えた。まったく、ロマンもなにもありゃしない。

そういえば、ボランティア労働させられていた赤鼻のトナカイさんは、今頃、サンタの親方にちゃんと正規雇用してもらえたのだろうか、などと思ったりもした。

でも、どんな状況にあったって、聖夜は万人に平等に訪れる。ともあれ、それぞれなりの聖夜を楽しみましょう。

メリークリスマス!


2010年12月12日 (日)

■政党交付金と科研費

年末になると、いつも「離党」「新党結成」「勉強会」「会食」など、政局がらみの話がいきかって、国会議員や政治部記者たちがそわそわするという。なぜか。それは、政党交付金と関わっているという見方がある。

政党交付金を受けるためには、1月1日に新党ができていないといけない。だから、政治家たちは〆切前の年末に政局をやって、駆け込みで新党を作りたがるのだという。過去には、12月31日に新党を結成した強者たちもいる。

この現象は、科学研究費補助金(科研費)を受けたい研究者たちが、〆切前の秋頃に共同研究チームを作りたがるのと、とてもよく似ている。よしあしは置いといて、とりあえず〆切があると人間は動くようです。

ただし、政党交付金と科研費とでは、大きな違いがひとつある。

政党交付金は、政党の要件を満たせば「必ずもらえる」。しかし、科研費は匿名の専門委員によって審査され、採択されるのは「一部にすぎない」。私たち研究者は、実績や内容によって選別を受けるのが当たり前と思っているので、採択を目指して、ない知恵を一生懸命しぼり、申請のための作文をするのである。だから、政党交付金を必ずもらえると当て込んでいる政治家たちの感覚はすごいなあと、逆に驚きがある。

提案。政党交付金にも、「議員たちの実績を加味した審査制」を導入してはいかが? 本会議出席率とか、いろいろな指標はあるでしょう。


2010年12月7日 (火)

■変な研究をせよ

11月に、2回生のまとめの発表が終わって一段落。次の〆切が近づいてきた。1回生たちの「セミナー1」では、年度末に、自由研究に基づく小論文を完成させなければならないのである。

研究って、図書館で本を読めばいいんでしょうか。
ネットとかで調べてきたらいいでしょうか。

いやいや。どうやって調べるかも大事だけれど、とりあえず手段はどうでもいいから。何を知りたいかの照準を合わせよう。

え、でも、知りたいことなんて、よく分かんないんですけど。

まあまあ、そういわず、とりあえず座ったら。紅茶でも飲むか。

雑談、そして10分経過。テーマと調査方法がだいたい決まっている。

だれでも思いつくような陳腐な問いからは、くだらない答えしか出てこない。最悪の研究とは何か、それは、教科書に書いてあるようなことしかできないやつのことだ。君のそういう変な思いつきのほうが、よっぽどすばらしい。教科書読むよりも、好きなブログでも見物するなり、何かこだわりのある人に会って話を聞いてくるなり、してきたらどう?

「資料収集」と称して、2週間。学生たちは、変わったデータの数かずをもってくる。

「おおー。あんた、変な研究してるな(笑)」
「え、変ですか?」
「うん。こんなネタをまじめに集めたやつ、他にいない」
「大丈夫ですか」
「もちろん大丈夫。何回も言うけど、『変』というのはほめことばだ」

小論文には、ビシバシと赤ペンを入れて添削をする。しかし、それは学生たちが自分の手で集めてきた貴重なデータを、いっそう輝かせるための手段に過ぎない。学生の着想とデータの魅力に比べれば、教師など無力、せいぜい型を整えるていどのことしかできないのだ。

学生とデータをアシストするために。小論文指導の日々、もう少し続きます。


2010年12月3日 (金)

■特定の分析方法をもつ学問

特定の分析方法をもつ学問が、うらやましく思えることがある。
その方法を学生に教え、使わせ、できるようになるのを目を細めて見守ることができるから。

特定の分析方法をもつ学問が、どうでもよく思えることがある。
方法を問わず、おもしろいできごとに自分がフィールドで出会うことができるから。

特定の分析方法をもつ学問が、気の毒に思えることがある。
その方法にしがみつき、魅力ある対象やアプローチを避けているように見えることがあるから。

特定の分析方法をもつ学問が、おもしろそうに思えることがある。
その方法を借りて、新しい自分のフィールドワークができそうだと思えることがあるから。


2010年12月1日 (水)

■「ユ」の字の形をした駅

大阪ローカルの話です。

勤務先の大学は、守口と枚方の二カ所にキャンパスがある。どちらに行くにしても、JR大阪環状線の「京橋」駅が便利だ。ただし、この駅には電車が3本乗り入れていて、ちょっと構造がややこしい。いつも、全体の構図はどうなんだろうと考えていた。

京阪とJR環状線の乗り換え駅なので、最初は「十」字の形の駅だと思っていた。縦がJR環状線、横が京阪。ちょうど交差した形をしているな、というふうに。

やがて、仕事がらJR東西線(学研都市線)も使うようになって、そうか、「十」じゃなくて「キ」の字の形をした駅だと思うようになった。縦はやはりJR環状線、横棒の上が京阪で、下がJR東西線。平行して走る2本の線を、縦に串刺しにした感じ。

うーん。どうも「キ」じゃないなあと、毎日毎日毎日毎日、通勤しながら考えていた。そうか、3つの線のホームがちゃんと交差していなくてずれているから、実は「ユ」の字の形の駅なのではないか。

なるほど、「ユ」の字なんだと思うと、駅周辺のいろいろな施設の所在地が、あざやかに理解できた。何かが腑に落ちた。

巨大なターミナルなどのごちゃごちゃした構造を見ると、全体図がどうで、どの方角を向いていて、自分がどこにいるのかを、執拗に確かめないと気が済まないという性癖がある。京橋駅が「ユ」で理解できたことで、ひとつ難関をクリアした。

ちょっと難しいのが、新大阪駅。新幹線と在来線(東海道本線)が並行ではなく、斜めに交差しているから。御堂筋線も含めて「H」形の駅(正確には、斜体の「H」)だと考える。淀川がどっち側にあるか、淀川を渡らないのはどの線かと考えるようになって、だいたい分かるようになりました。



矢印このページのトップへ    亀井伸孝日本語の目次へ

All Rights Reserved. (C) 2003-2013 KAMEI Nobutaka
このウェブサイトの著作権は亀井伸孝に属します。